2015 Fiscal Year Annual Research Report
炭素12原子核の稀ガンマ崩壊モード探索による宇宙での元素合成過程の解明
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14J01256
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
津村 美保 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 元素合成 / 天体核反応 / 固体水素標的 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、宇宙における元素の生成量を計算するうえで大きな不確定要素となっていた12Cのγ崩壊幅を精密に決定することである。そのため本研究では、極薄固体水素標的に12Cビームを入射する逆運動学反応1H(12C, 12C*p)により12Cの励起状態を生成し、その全イベント数と基底状態へγ崩壊するイベント数を比較することによってγ崩壊幅を決定することを計画していた。注目しているγ崩壊イベントは確率10-7以下の極めて稀な事象であるため、低バックグラウンド条件下での測定が不可欠である。そのため本年度は引き続きバックグラウンドを排除するための1.極薄固体水素標的 2.反跳陽子のタグ用検出器 の開発を行った。以下に上記2点の開発遂行状況を記す。 1. 固体水素標的 本実験のセットアップで極薄固体水素標的の運用するための準備を行った。本実験ではビームの調整のために固体水素標的を容易にビームラインから退避・復旧できるようにしておかなくてはならないため、冷凍機を散乱槽に取り付けた状態で上下駆動できるよう、アダプタの設計・製作を行った。また、均一な標的を作成するための標的押さえ下ろし機構も設計・製作を行い、試験をして実際に運用できることを確認できた。 2. 反跳陽子のタグ用検出器 高計数率条件下に耐えうる検出器として新しい結晶GAGGを用いた開発を行い、ビームを用いた試験で実際の実験条件での18 kcps/crystalで運用できることを確認できた。また、70 MeVまでの陽子を検出する際に、結晶でのクエンチングが問題にならないことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験を行うための固体水素標的、反跳陽子のタグ用検出器、その他の検出器はすでに開発・試験済みであり、すぐに実験に投入することができる。ただ、加速器からのビームを用いた実験はまだ行われておらず、当初に予定よりも遅れている。ビームを用いた実験は来年度早々に予定されており、データを取得でき次第、直ちに解析を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
2年度目までに開発してきた磁気スペクトロメータの焦点面検出器・反跳陽子のタグ用検出器を導入し、極薄固体水素標的にビームを照射して本研究のデータの取得を行う。 データの取得後は直ちに解析を行い、1H(12C, 12C*p)反応で測定した陽子の角度とエネルギーから散乱された12Cの励起エネルギースペクトルを求める。散乱された12C*のうちγ崩壊して基底状態の12Cとして飛来したものを運動量・散乱角度・エネルギー損失により分析し、12Cの励起状態のγ崩壊幅を決定する。解析した結果を論文にまとめ学術雑誌に投稿する。
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