2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J01294
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高野 友理香 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 豊臣政権 / イエズス会 / フランシスコ会 / 日本二十六聖人 / 対外交渉史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究計画では、主に海外史料の収集と翻訳作業を行い、その成果の本年度の後半から来年度にかけて公表をする予定であった。 海外史料の収集と翻訳については、本年度は主にインディアス総合古文書館(AGI)、上智大学キリシタン文庫にて、史料の調査・収集を行った。また、翻訳作業については、マルティン・デ・ラ・アセンシオンの報告書など、日本二十六聖人の殉教事件にまつわるものを中心に行った。 成果の公表については、修士論文から内容を発展させ、第35回歴史人類学会大会にて研究報告(「豊臣期イエズス会・フランシスコ会の対日交渉―領主層との関係性に注目して―」、2014年11月16日於筑波大学東京キャンパス)を行った。本報告では、日本二十六聖人の殉教事件を題材に、当時の豊臣政権の対外交渉の様相を3つに類型化し、その中で交渉を行った人々の政治的位置づけを考察した。秀吉の対外認識は史料での主張の内容から、明国の他に「周辺諸国型」(朝鮮・琉球・初期のフィリピン)と「南蛮国型」(ポルトガル・殉教事件後のフィリピン)として分類されるが(北島万次『豊臣政権の対外認識と朝鮮侵略』校倉書房、1990年)、その具体的な政治機構の差異は指摘されてこなかった。これに対し両者の差異は、豊臣政権の「取次」と同様対外交渉において秀吉に仲介者としての役割を期待された人物の有無であることを明らかにし、殉教事件前のイエズス会・フランシスコ会史料にてその裏付けを行った。また、「周辺諸国型」交渉が近世外交への有機的繋がりを有している一方、修道会(海外勢力)の国内での自由な活動に対し、豊臣政権がその土地を支配する大名・奉行がその管理することで対処していた「南蛮国型」については、交流する土地と人を制限する近世外交には見受けられないことを指摘し、近世の海禁政策やキリスト教禁制の遠因を対外交渉の政治的構造から考察する必要性を主張した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のとおり、本年度の研究計画は海外史料の収集・翻訳とその成果の公表である。そのどちらも、現在交付申請書に記述した研究計画通りに進行している。 海外史料の収集については、海外における史料調査はインディアス総合古文書館への訪問にとどまったが、デジタルアーカイブ化されていない史料を多数収集することができた。 また、前掲の研究報告についても、領主層の修道会交渉を政権内の政治構造内に位置づけるという本研究の目的から鑑みても、大きな成果といえるだろう。しかし、さらなる史料的裏付けの必要性や、地域に関係無く修道会との交渉に携わる前田玄以の役割の位置づけなど、課題は数多くあるが、1年目の研究計画としてはおおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、前項で課題として挙げた前田玄以などの役割の位置付けをローマイエズス会文書館所蔵の発給文書などから考察を続ける。秀吉の対外認識が対外交渉にまつわる政治構造に直接影響を及ぼしているという反面、交渉担当者の裁定がある程度認められたことに関して、秀吉と領主層との重層的な分析を充実化していく。 現在は秀吉存命期、主に日本二十六聖人の殉教事件を題材にイエズス会・フランシスコ会との交渉事例の検討を行なっているが、それと並行し、秀吉死後の権力構造の変化やいわゆる「近世化」の初期過程における修道会交渉の政治構造についても調査を始め、近世外交の前提としての政治構造の変遷を検討する。さらに、同時期におこったイベリア両国の国際事情(イギリス・オランダなどの海外進出など)が東・東南アジアの修道会に与えた影響も考察する。それらを統合し、本研究の目的である、修道会が領主にもつ影響力、また豊臣政権にもつ影響力を政権の政治構造内に位置付けを行なう方針である。
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Research Products
(1 results)