2014 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエにおける栄養状態に依存したアミノ酸摂食行動の行動遺伝学的解析
Project/Area Number |
14J01326
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
利嶋 奈緒子 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
Keywords | ショウジョウバエ / アミノ酸 / 摂食行動 / 恒常性 / 国際研究者交流(ドイツ) |
Outline of Annual Research Achievements |
ショウジョウバエがどのような神経機構で、体内の栄養状態に応じてアミノ酸の摂食行動を変化させているかを調べるため、遺伝学的手法を用いた多様なアプローチから研究を行った。 1. 栄養状態依存的なアミノ酸摂食行動に関わっている遺伝子を探索するため、野生集団から確立された多数の系統を用いて摂食行動実験を行ったところ、アミノ酸欠乏に応じたアミノ酸摂食行動において自然集団の中に多様性が存在することがわかった。公開されている各系統の全ゲノムデータ、マイクロアレイデータを元に、SNP解析と遺伝子発現量の比較解析を行い、複数の候補遺伝子を同定した。この成果はJournal of Insect Physiology誌に発表した。 2. ショウジョウバエのアミノ酸受容体の探索のため、様々な味覚受容体遺伝子発現ニューロンをGal4/UASシステムを用いて機能阻害し、アミノ酸摂食行動に影響が出るか調べた。その結果、糖受容ニューロンの機能阻害がアミノ酸摂食に影響を及ぼさないことから、甘味受容がアミノ酸の摂食に必須でないことがわかった。また、機能阻害がアミノ酸摂食に影響を及ぼすニューロンも見つかったため、それらのニューロンがアミノ酸受容に関わっているのか、今後詳しく調べ、またそれらニューロンに発現しているどの受容体がアミノ酸を受容しているのか、調べる予定である。 3. ショウジョウバエ成虫はアミノ酸なしでも生存可能であるが、幼虫は成長のために常にアミノ酸の摂取が必要である。幼虫がアスパラギン酸と匂いの連合学習ができることがすでにわかっていたが、その他のアミノ酸でも学習できるのか、ドイツの研究室との共同研究によって20種類のアミノ酸について調べた結果、全てのアミノ酸に報酬学習の効果があるとわかった。この結果はショウジョウバエ幼虫が20種すべてのアミノ酸を感知できることを示すとともに、アミノ酸受容の神経回路解明のための新たなアプローチを切り開く発見である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アミノ酸摂食行動に関わる神経回路の解明に向け、これまでに候補となる多数のニューロン、遺伝子の同定に至っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
野生集団を用いたスクリーニングによって多数の候補遺伝子が挙げられたが、その中に味覚や代謝に関わる遺伝子は含まれていなかった。そのような遺伝子は発現量が微量であるため、ショウジョウバエ全体を用いたマイクロアレイのデータからは、その差異が検出できなかった可能性が考えられる。今後は、頭部のみを用いるなど、部位を限定したマイクロアレイを独自に行うことを計画している。また、現在進行中であるカルシウムイメージングの手法を用いた実験を進め、アミノ酸刺激に応答するニューロンの同定を目指す。同時に、電気生理学的手法を用い、どの味覚感覚子がアミノ酸に応答するか、またアミノ酸の欠乏によって味覚応答に変化がでるか調べる。
|
Research Products
(4 results)