2014 Fiscal Year Annual Research Report
海藻培養最適化に向けた海藻群の挙動解析シミュレータの開発と水流制御技術の構築
Project/Area Number |
14J01341
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小川 純 北海道大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | 海藻 / 物理シミュレーション / 絡み形成 / 制御手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度における研究では,スジオアノリ群を対象とした培養槽内に生じる絡みを抑制する水流制御方法に取り組んだ.情報工学的な観点から物理シミュレーション解析を用いて海藻同士の絡みの発生推定と定量評価尺度の提案を行い,絡みの定量評価尺度における実海藻の絡みに対する妥当性について実際の攪拌環境を用いた検証実験を実施した. 前述に対する研究では,培養層内での攪拌運動から生じる海藻同士の絡み形成を定量的に評価する指標が現段階で提案されていない問題点に対し,物理シミュレーション解析を通して海藻同士の絡み形成について特徴量として数理モデル化し,その特徴量を特徴ベクトル化することで非線形サポートベクターマシンに基づいたパターン学習による人の認識に近い絡みを判定する分類器を提案した.その成果として攪拌運動中の海藻群における絡み形成を定量的に測定することを可能とした. 後述に対する研究では,提案した絡みの定量評価尺度について実海藻の絡みに対する妥当性検証を行った.実際のスジアオノリおよび磁気攪拌機を採用した攪拌実験機材を構築した.本環境はマイクロコンピュータを用いて磁気攪拌子の回転速度制御を実施することで攪拌流体速度を調整可能なものとした.実際の絡み制御に有効な水流特性を解析するために, 攪拌機に与える電圧を一定および周期関数により変化させることで, 定常流, 非定常流での絡み発生量について定量評価尺度を用いて解析した.その解析結果から渦流付近での海藻の攪拌運動が絡み形成に寄与しており,周期的な逆流生成で得られる水流特性が渦流を緩和する攪拌となり絡み制御に有効であることを明らかにした.加えて,水流条件を変更して複数の検証実験を行ったところ,シミュレーションと実環境において絡みの評価尺度が同等の推移傾向が現れることを明らかにして,提案した絡み評価指標の妥当性を現実の絡み評価に対する妥当性を示した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度における研究成果は,物理シミュレータを用いて糸状海藻の一種であるスジアオノリ同士の絡み制御を制御するための水流特性を解析することが目的である.本目的に対して,物理シミュレーション上での定量評価指標を提案することで既存研究では行われていなかった絡みの定量的解析を絡みの特徴に基づいた数理モデルの開発とパターン分類器を組み合わせることで可能にしたことだけに留まらず,実際の海藻の絡みに対して適切な実験機材と検証方法を用いてその妥当性の検証を行った.また,物理シミュレータと実環境を提案した絡みの定量評価指標を用いて比較および検証することで絡み発生の起因となる水流特性を究明し,シミュレータ上での水流制御方法を実際の水流に適用することで実際に生じる絡みの発生量を抑制可能であることを示した.これらの成果は期待していた以上の進捗であり,次年度以降において当該研究がより先の研究に取り組めることを意味している.また,海藻培養研究における糸状海藻群の絡みという物理的な障害に対する情報工学的なアプローチに基づく有効な解決方法を実水流の制御を通して確立した点は海藻培養研究において重要な知見獲得であるといえる. また,これらの成果は,Journal of Advanced Computational Intelligence and Intelligent Informatics 誌に掲載された他,国際会議13th International Conference on Intelligent Autonomous Systems, および,The Twentieth International Symposium on Artificial Life and Roboticsやロボティクス・メカトロニクス講演会2014でも積極的に報告しており,表記の評価とした.
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究における今後の展望として,糸状海藻に加えて,葉状海藻の挙動解析を可能とする汎用的物理モデリングの方法を提案することで多種多様な海藻に応用できる挙動解析シミュレータの開発を行う.現状ではコンブに代表される大型柔軟構造体に適した物理シミュレーション方法は研究段階であり,モデル同士の接触時にすり抜けてしまう等の問題がある.コンブ状の柔軟構造体において材質などの物理特性を定義し,変形・接触時における物理モデル同士の物理的相互作用を考慮することが可能な方法として,ボクセルシミュレーションがある.このシミュレーションではボクセルごとに複数の物理特性を与えることが可能であり,薄い葉状海藻同士における物理的干渉を高精度で計算することが可能である.しかしボクセルごとに膨大な計算量の物理演算を行う必要があるため,葉状海藻群における大規模な物理シミュレーションを行う場合には時間コストが膨大となる問題点がある.そこで本研究ではGPUを用いた並列演算処理をボクセルシミュレーションに導入することで,高速かつ高精度な葉状海藻群の攪拌シミュレータの開発を行う.また,開発した攪拌シミュレータを用いて異なる生体構造(糸状・葉状・樹枝状)を持つ海藻種の挙動について定量的な解析を行い,絡み形成時における特徴を定量化することで多種の海藻の絡みの形成を避けるための水流制御方法を物理シミュレーションに基づく提案する.またこれまでの研究で得られた結果を統計的に解析することで海藻の絡み形成と水流特性との関係性における一般性を導出する.
|
Research Products
(4 results)