2014 Fiscal Year Annual Research Report
越境文学における言語遊戯--多和田葉子をめぐる修辞学と翻訳の問題
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14J01345
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
越川 瑛理 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 越境文学 / 日独比較文学 / 翻訳論 / 修辞学 / 言語遊戯 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究「越境文学における言語遊戯――多和田葉子をめぐる修辞学と翻訳の問題」においては、在独日本人作家である多和田葉子(1960-)の創作について「エクソフォニー」という概念に着目しつつ研究を行っている。その際、多和田の著作において顕著である言語遊戯を修辞学に基づき分析しつつ、多和田の日本語とドイツ語の二言語使用・自己翻訳において言語遊戯が占める役割を明らかにし、翻訳論にあらたな射程をもたらすものとしての多和田の二言語執筆のあり方を検討する。平成26年度は研究課題をさらに発展させるため、多和田葉子のとりわけ近年の日本語とドイツ語のどちらもが刊行されている作品を中心に取り上げ、研究を行った。当該作品においては、翻訳および翻訳者の問題を言語遊戯とともに論じ、本研究の研究課題をさらに深化させるものとなった。そして、研究対象作家について考察を行う傍らで、翻訳論および修辞学に関する研究資料の読解を進めることができた。 また、平成26年度は、研究発表を中心に研究内容の深化および国内外の研究者と広く意見を交わすことのできた一年となったといえる。6月にはカナダ・バンクーバーで開催された国際学会IGALA(国際ジェンダーと言語学会)に参加し、3.11以後の日本語文学作品について取り上げるなかで、とりわけ多和田の言語実践が、翻訳を通していかに現状をとりまく問題と関わりを持とうとしているかを論じた。8月には渡独し、ドイツ国内でも本研究と関わりが密接な「亡命・移民文学」関連の蔵書が豊富な「マールバッハ文学資料館」やベルリンの州立図書館を訪れ、日本で入手困難な移民文学や多和田に関する近年の研究資料を中心に収集を行った。11月には毎年来日し、講演やパフォーマンスを行う多和田関連のイベントに参加し、作家との直接の交流を通して、研究内容に対し新たな知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、博士後期課程の開始年にあたり、修士課程までに培った土台を基礎としながらも、新たな作品およびテーマ設定で研究に取り組むことができ、おおむね当初の計画通りに研究を進めることができた。国際発表等を通して研究発表の場を確保することができたが、当初の計画にあった論文の投稿は成立しなかった為、次年度以降はこの点をさらに推し進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度前半は、平成26年度で扱った内容を集約したものを、5月の日本独文学会主催の春季研究発表会においてシンポジウム内で発表し、その後当該内容を研究叢書として刊行することが予定されている。また、平成26年度にまとめる予定であった、修士論文の内容を紀要論文として投稿する予定である。平成27年度後半は、前年度とは異なる多和田のあらたな二言語執筆作品に取り掛かり、9月以降はドイツに半年間滞在しフンボルト大学にて指導教授のもと研究を進めていく。
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Research Products
(1 results)