2014 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子発現量のゆらぎとストレス環境下における細胞の生存の関係
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14J01376
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野添 嵩 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 1細胞計測 / 細胞系譜 / 適応度 / 大腸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
合成生物学的に構築した大腸菌を用いて、生存関連因子の発現状態のゆらぎがストレス環境下での長期的な生存とどのように関わっているかを調べるため、(1)ストレプトマイシン耐性遺伝子発現株の検討および改良、(2)遺伝子の発現状態といった「表現型」と細胞の増殖能力や生存能力の指標となる「適応度」の関係を細胞系譜に基づいた1細胞レベルで評価する細胞系譜解析の理論的枠組みの構築、および(1)で作製したストレプトマイシン耐性遺伝子発現株の計測へのこの解析手法の応用を行った。 (2)について、我々は、1細胞計測によって得られる細胞系譜から、遺伝子発現レベルといった「表現型」と細胞の増えやすさ、生き残りやすさを表す「適応度」の関係を定量する理論的な枠組の整理を行い、表現型の違いがどの程度適応度差をもたらすのかを定量的に評価する手法を開発することに成功した。この結果はJSMB/SMB2014および第52回日本生物物理学会で発表した。 このような細胞系譜解析手法を(1)で作製したストレプトマイシン耐性遺伝子発現株のタイムラプス計測結果に適用した。細胞時系列における耐性遺伝子の発現レベルの指標として、「時間平均蛍光蛋白質濃度」と「時間平均蛍光蛋白質生成率」の2種類を考えた。(2)の解析によると、ストレプトマイシン存在下における細胞集団の平均的な増殖能力は、耐性遺伝子を持たせることによって上がるにもかかわらず、細胞系列間でみられる「ゆらぎ」のレベルでは、発現した蛋白質の濃度はそれほど積極的に適応度差をもたらしていない、という可能性を示唆する興味深い結果を得た。この結果は米国生物物理学会第59回年会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ストレプトマイシン耐性遺伝子発現株の検討および改良を行ったことで、順調に実験を進めることができている。また、データ解析を進める上で基礎となる理論的な枠組みの構築に成功したことにより、得られた実験データから、今までにない知見を得ることができた上、今後のデータ解析にも多いに有用と考えられる。この点で、当初の計画以上の進展があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で開発した細胞系譜解析方法により、耐性遺伝子発現量のゆらぐ速さと長期間生存する細胞系列の出現頻度の関係を定量的に評価する。 次に、ストレス環境とストレスの無い成長環境を交互に切り替えるような実験を、環境を切り替える時間周期を様々に変えて行い、ストレス環境で生き残った細胞が、生き残りやすさの記憶をどのくらい持続することができるのかを、測定する。 これらをもとに、遺伝子発現量のゆらぎの時間スケールが、ストレス環境における細胞集団の適応現象において果たす役割について議論する。
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Research Products
(4 results)