2014 Fiscal Year Annual Research Report
テレスコープアレイ実験による極高エネルギーガンマ線・ニュートリノ探索
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14J01385
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山崎 勝也 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 極高エネルギー宇宙線 / テレスコープアレイ実験 / 国際研究者交流 アメリカ合衆国ユタ州 |
Outline of Annual Research Achievements |
極高エネルギー宇宙線のエネルギースペクトルや粒子種の測定は既にある程度達成されており,大幅な結果の改善はすぐには望めない.そこで本研究ではテレスコープアレイ(TA)実験観測データから極高エネルギーガンマ線・ニュートリノを探索し,これまでとは別の視点から極高エネルギー宇宙線の起源を解明することを目的としている. 本年度はTA実験の地表検出器(SD)と大気蛍光望遠鏡(FD)による同時観測空気シャワー事象を用いて極高エネルギーガンマ線を探索した.空気シャワー事象再構成ソフトウェアの評価,及び極高エネルギーガンマ線の探索のため,一次ガンマ線・陽子起源のシミュレーションデータを作成した.作成したシミュレーションデータの再構成結果と実データの再構成結果を比較することで,再構成によって得られる情報の決定精度を評価し,空気シャワーの到来方向決定精度は 0.7°,コア位置の決定精度は 111 m,エネルギー分解能は 10% ,縦方向発達最大発達深さ(Xmax)の分解能は 29 g/cm^2 であることを確認した. 2008年5月から2013年7月までにSDとFDによって同時観測された空気シャワー事象のXmaxと一次粒子のエネルギーをシミュレーションと比較することで一次ガンマ線事象を探索した.その結果得られた一次ガンマ線候補事象数は,一次陽子から期待される誤判定事象数と無矛盾であった.また,この結果を用いて地球に到来する極高エネルギー宇宙線の内にガンマ線が占める割合の上限値を得た.これはSDとFDを用いたハイブリッド法によるものとしては,北半球で初の成果である.この上限値によって極高エネルギー宇宙線の起源を超重粒子の崩壊・対消滅とするトップダウンモデルを10^19 eV 以上のエネルギー領域については棄却した. 以上の成果を日本物理学会で口頭発表し,学位論文としてまとめ,博士(理学)の学位を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,作成した一次ガンマ線及び陽子によって発生する空気シャワー事象のシミュレーションデータを作成し,これを用いて空気シャワー事象解析ソフトウェアの解析精度を評価し,実データ解析結果と比較することで極高エネルギーガンマ線探索を実行した.この結果を用いて北半球で初めてハイブリッド観測結果から,地球に到来する極高エネルギー宇宙線の内,極高エネルギーガンマ線が占める割合に上限値を与えることに成功した.また,これらの成果を学位論文として公表し,博士(理学)の学位を取得した. 以上のことから,本研究課題は当初の計画通りおおむね順調に進展していると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,より高精度な極高エネルギーガンマ線探索を実現するため,空気シャワー事象再構成によって得られる空気シャワー情報の内,地表高度での横方向粒子数分布,空気シャワーフロントの曲率などの情報を新たに極高エネルギーガンマ線選別条件として組み込む.ここまでの成果を投稿論文として公表し,第34回宇宙線国際会議を始めとする国内外の研究集会にて発表する. 更に,極高エネルギーニュートリノ事象探索のためのソフトウェアをTA標準の解析ソフトウェアに組み込み,シミュレーションを用いて解析精度を確認する.その後,実データから極高エネルギーニュートリノを探索し,これらの成果を国内外の研究集会にて発表する.
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Research Products
(4 results)