2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J01402
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
池田 敬 東京農工大学, 大学院連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
Keywords | 自動撮影カメラ / ニホンジカ / 密度推定 / 移動速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 確度の高い生息数が把握可能な北海道洞爺湖中島では、平成24年3月にシカが277頭生息していたが、密度操作により平成26年3月には77頭にまで減少した。そこで、本研究は密度操作下でのRowcliffe法の推定密度や精度、確度を検証した。Rowcliffe法はこれらの期間で高い精度を持ち、個体数の減少を検出した。また、推定密度の確度は大きく月変動しており、7月・9月・10月は確度の高い推定値を算出した。その結果、シカの出産行動や繁殖行動、夏季の高温による活動性の低下が推定密度の確度に影響を与えていることが示唆された。
2. その後、生息数は平成26年4月で56頭、平成27年3月で47頭と前年度よりも低い密度で安定していた。そこで、低密度下でのRowcliffe法を検証した。Rowcliffe法は確度の高い生息数とほぼ同等の値を示し、精度・確度ともに高い推定密度の算出が可能であった。また、洞爺湖中島の結果は、高密度下の場合は推定密度が過小推定される傾向がある一方で、比較的密度が低い場合はより確度の高い推定値を算出していることが示唆された。
3. 上述の研究と同時に、調査地にシカが移出入する個体群(北海道支笏湖畔)でRowcliffe法の汎用性を評価した。Rowcliffe法は6月と10月で高い推定値、12-3月で低い推定値を算出した。そのため、出産期や繁殖期、越冬期でのシカの行動が推定密度に影響を与えることが示唆された。また、GPS首輪のコストを削減し、Rowcliffe法の汎用性を高めるために、北海道白糠丘陵と支笏湖畔でのシカの移動速度を比較した。白糠丘陵の5月における移動速度は支笏湖の12-5月の速度よりも明らかに速いという結果を示した。そのため、他地域の移動速度を利用する場合、春季の季節移動は移動速度に大きな影響を与えることが考えられることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 洞爺湖中島では密度操作が終了しており、高密度状態からの生息密度の減少過程を正確に検出できた。そのため、将来的に捕獲により野生動物の個体数を減少させる際に、Rowcliffe法が捕獲の影響を受けずに正確な生息密度の情報を収集することが可能であることが示された。
2. 平成26年4月~平成27年3月における洞爺湖中島の生息密度は約10頭/㎢であった。研究1と研究2の結果から、約10頭/㎢以上の密度下ではRowcliffe法が利用可能であることが示された。現在、各地域に生息しているシカやイノシシの密度は同程度かそれ以上であるが、一般的に低密度ではなく、植生や農作物への被害が生じる密度である。そのため、これらの被害を減少させるためには、約10頭/㎢以下にする必要がある。また、ツキノワグマやヒグマは約10頭/㎢を下回っていると考えられる。このような状況下でRowcliffe法を利用するためには、さらに低密度下での検証が必要である。
3. 支笏湖畔ではRowcliffe法による推定密度は明確な季節性を示した。また、支笏湖畔と白糠丘陵での移動速度を比較した結果、季節移動期以外では他地域の移動速度が利用可能であるということが示された。そのため、移動速度の算出するためのGPS首輪コストは削減できると考えられ、Rowcliffe法の汎用性が高まると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. Rowcliffe法を野生動物の様々な環境に適用するためには、上述の通り10頭/㎢以下で検証する必要がある。しかし、現実的には10頭/㎢以下の環境で確度の高い生息数を算出している地域は皆無である。そのため、本研究はRowcliffe法の実用性を追求する上で、前年度と同様平成27年5月~11月に自動撮影カメラを洞爺湖中島に設置する。高密度下での研究1は出産行動や繁殖行動、夏季の活動性の低下が推定密度に影響を与えていることを示唆している。しかし、密度操作が行われて以降の推定密度はどのような影響を受けるかに言及する必要がある。そこで、各月の推定密度の確度と精度を算出する。研究1、研究3、研究4の結果と合わせて、1年間のうちのどの時期にRowcliffe法を利用して密度を推定することが最適であるかを考察する。
2. 研究3では支笏湖畔の1地域しか設定出来なかったため、他の地域で明確な季節性を収集できるかは不明である。そのため、5月~12月に自動撮影カメラを複数地域に設置し、推定密度の季節性を把握する必要がある。研究計画は支笏湖畔に複数地点確立する予定であったが、地域性や密度を考慮し、支笏湖畔以外の異なる地域に自動撮影カメラを設置し、推定密度の季節性を収集し、研究3での結果と合わせて考察する。
|
Research Products
(17 results)
-
-
[Presentation] Change in activity pattern of sika deer Cervus Nippon before, during, and after culling operation.2015
Author(s)
Ikeda, T., H. Takahashi, H. Igota, Y. Matsuura, M. Azumaya, T. Yoshida, K. Takeshita, K. Kaji.
Organizer
5th International Wildlife Management Congress
Place of Presentation
Sapporo Convention Center (Sapporo, Japan)
Year and Date
2015-07-26 – 2015-07-30
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-