2014 Fiscal Year Annual Research Report
C型肝炎ウイルスによるGLUT2遺伝子発現抑制の分子機構
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14J01405
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松井 千絵子 神戸大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | C型肝炎ウイルス / HNF-1α / GLUT2 / 糖代謝異常 / NS5A |
Outline of Annual Research Achievements |
C型肝炎ウイルス(HCV)は高率に糖代謝異常を発症するが、詳細なメカニズムは明らかになっていない。これまでの私共の研究で、HCV感染によりglucose transporter (GLUT)2転写抑制が起こり肝細胞内への糖の取り込み抑制が惹起され高血糖を誘発し、これはHCV感染に伴うhepatocyte nuclear factor (HNF)-1α遺伝子の転写抑制とHNF-1α蛋白質のライソソーム依存性分解が関与することを報告してきた。平成26年度は、NS5AによるHNF-1α蛋白質の選択的分解機構を解明するために、NS5AとHNF-1α蛋白質の認識部位の同定を行った。NS5AとHNF-1αそれぞれの欠失変異体を多数作製し、免疫沈降法で解析した。その結果、NS5AとHNF-1αの相互作用にはHNF-1αのPOUs domainと、NS5Aのdomain Iのaa 121-126が重要であることが示された。さらにNS5A aa 121-126の中でもNS5A Val121がHNF-1αとの相互作用に重要であることが示された。また、NS5A V121Aの変異でNS5AによるHNF-1α蛋白質の分解が抑制され、NS5A Val121がNS5AによるHNF-1α蛋白質分解に必須であることが示された。 HNF-1αは肝臓において、多くの代謝に関わる遺伝子発現を調節している。そこで、HCV感染によるHNF-1αの発現抑制により影響を受ける代謝関連遺伝子を調べるため、HCV感染時の代謝関連遺伝子mRNA発現量への影響をRT-qPCR法で解析した。その結果、コレステロール・脂肪酸合成に関わる遺伝子がHCV感染で大きく変動することが示された。現在はこれらの遺伝子とHNF-1αの関連性を解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画で、NS5AによるHNF-1α分解誘導の分子機序を解明するためにNS5AとHNF-1αそれぞれの結合部位を決定することを目的とした。平成26年度の研究で、NS5AとHNF-1αの詳細な結合部位の決定に加えて、HNF-1αとの相互作用に重要なNS5Aの1アミノ酸を特定することができた。さらにこのアミノ酸に変異を入れるとHNF-1αとの蛋白質分解が抑制されることを示した。また、代謝関連遺伝子の解析では、HNF-1αによって調節される代謝関連遺伝子の中から、HCV感染によってmRNAが変動する遺伝子を多数見出した。それらの遺伝子の変動が、HCV感染によるHNF-1α発現抑制によって制御されているものかどうかの検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
NS5AのVal121はHNF-1αとの結合と、HCV感染によるHNF-1α蛋白質のライソソーム依存性分解に重要なアミノ酸であることを示した。そこで、NS5A Val121変異体を用いて、NS5AがHNF-1αのライソソーム依存性分解への影響を解析する。NS5A存在下でHNF-1αがライソソームに局在するのに必要な細胞内因子を同定する。そして、NS5AによるHNF-1αの選択的ライソソーム依存性分解機構を解明する。今回、HCV感染によって影響を受ける代謝関連遺伝子を同定したので、その遺伝子の発現変化によるウイルス増殖への影響、および細胞内代謝異常の発現機構を解析する。
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Research Products
(2 results)