2015 Fiscal Year Annual Research Report
液中原子間力顕微鏡による揺動する分子鎖の3次元立体構造のサブナノスケール計測
Project/Area Number |
14J01408
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
稲田 なつみ 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / 液中分子分解能観察 / 自己組織化膜 / エチレングリコール / タンパク質 / 分子動力学法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はナノ分子鎖構造の3D-SFM計測に対する定量性評価モデルの構築を検討し、計測に応じて必要なAFM技術開発を行った。またこれまでに3D-SFM計測で取得したヘキサエチレングリコール(EG6)末端とヒドロキシ末端の混合自己組織化膜の力分布像を理解することを目的に、分子動力学法を用いた動的過程シミュレーションを行った。 まずナノ分子鎖の空間分布を制御したモデル構造を構築するため、クリックケミストリー法を用いて任意のナノ分子鎖を表面に修飾可能な自己組織化構造を検討した。アルキン末端を有する三脚分子をそれぞれ調製して液中FM-AFM計測を行った結果、非常に周期性の高い表面構造を形成することを分子スケールで初めて明らかにした。クリック反応による分子構造の変化を一分子スケールで計測できる可能性を示す非常に重要な結果を得た。 次に前年度に検討していた高感度カンチレバーの励振効率向上を目指した光熱変換層導入については、光熱変換層の形成手順について詳細に検討し、再現性良く高効率な光熱変換を実現する条件を見出した。長時間安定性や原子分解能FM-AFM観察への影響を調べた結果、数時間の液中イメージングでも励振効率は低下せず、安定に原子分解能イメー-ジングが可能であることがわかり、光熱変換層の実用化に至った。 さらに、3D-SFM計測によって得られた力分布像は搖動するナノ分子鎖の運動をどのように反映しているのか、その可視化メカニズムを理解するため探針先端に働く相互作用力について分子動力学法によるシミュレーションを行った。算出した相互作用力分布の特徴は3D-SFM像と良く一致しており、3D-SFM像の力分布はEG6鎖の存在確率密度を反映していることが強く示唆された。またこの結果は、探針走査による影響をシミュレーションを用いて見積もることができる可能性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は新たな空間分布制御モデルの構築に取り組み、足場となる自己組織化膜の分子分解能観察に成功した。より自由に表面修飾できるモデル構築が可能になることで今後の進展が期待できる。また前年度に提案した光熱励振法の励振効率を向上させる光熱変換層をより詳細に検討し、実用化した。さらに分子動力学法を用いたシミュレーションを用いて算出した力分布像と実際の3D-SFM計測結果と比較し検証を行った。以上の研究成果により順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
新たなナノ分子鎖モデル構造を用いて、空間制御モデルやより実際の系に近いペプチドモデルを構築して計測を行い、3D-SFMによるナノ分子鎖計測の定量性を評価する。またシミュレーションについては水分子を含んだ系で計算を行うのは申請者のみでは困難であるため、その専門の研究者との連携を目指す。
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Research Products
(5 results)