2015 Fiscal Year Annual Research Report
三次元全脳イメージング法の構築と精神疾患モデル動物の脳構造解析
Project/Area Number |
14J01466
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
勢力 薫 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 全脳イメージング / 精神疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症等の精神疾患は病態機構が未解明であり、その根底にある脳内変化の探索が進められている。本研究では、当研究室で構築した細胞レベルの三次元全脳イメージング法を用いて、疾患モデル動物における神経活動や脳構造の変化を網羅的に検出し、精神疾患の病態や神経機能調節の機構の解明を目指す。 1. 全脳イメージングの高速化 細胞レベルの解像度の全脳画像の撮影は、既存の方法では、マウス脳1個あたり1週間以上を要し、我々のイメージングシステムでも、22時間を要していた。そこで、本システムを構成する機器の設定を改良した結果、細胞レベルの解像度を維持したまま、4時間以内のマウス全脳イメージングを実現した。この高速化により、マーモセット等の霊長類の全脳解析にも発展させることも可能になった。 2. 精神疾患モデル動物の全脳解析 統合失調症モデルとして、Schnurri-2欠損マウス(国内共同研究)の全脳細胞の位置情報を取得し、脳構造の全脳解析を行った。細胞の分布に関して、現時点では、有意な変化は認められていない。一方、Schnurri-2欠損マウスではN-methyl-D-aspartate (NMDA)受容体の機能低下が示唆されている。この表現型は、いくつかの統合失調症モデルに共通し、疾患の中間表現型の一つと考えられているが、NMDA受容体は脳内に広く発現・機能しているため、その神経回路機構は明らかになっていない。そこで、NMDA受容体シグナル系の破綻に伴う行動異常の責任神経核を探索するため、NMDA受容体拮抗薬による神経活動変化を全脳レベルで解析した。活性化した神経細胞が蛍光標識されるArc-dVenusマウス(国内共同研究により譲受)を用いて解析した結果、これまで報告の無い特定の脳部位で神経活動が亢進している事を見出した。この領域の機能や回路構造の解析により、脳疾患や精神機能の調節に関わる新たな神経回路の解明に繋がる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より計画していたSchnurri-2欠損マウスの脳構造の解析では、現時点では有意な変化が認められていないものの、NMDA受容体の機能低下に着目し、NMDA受容体拮抗薬による神経活動変化を全脳レベルで解析することにより、これまで報告のない脳領域で神経活動が亢進していることを見出した。NMDA受容体の機能低下は、統合失調症の病態仮説であり、いくつかの統合失調症モデル動物に共通する中間表現型の一つであることから、本成果は、この疾患の神経回路機構の解明に繋がることが期待できる。このように、疾患モデル動物の全脳解析を通して、これまで全く知られていなかった脳内変化を見出すことができたことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
NMDA受容体シグナル系の破綻と、それに伴う行動異常に関わりうる神経活動の変化を検出することに成功したので、今後は、①抗精神病薬により行動異常が抑制されている時の全脳レベルでの神経活動を解析し、②神経活動の変化が認められた領域の細胞を蛍光標識し、神経投射パターンを明らかにすることで、今回同定した神経活動の変化と疾患様行動との関連性や、症状に関わる神経回路構造・機能の解明を試みる。
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Research Products
(4 results)