2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J01511
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 駿丞 筑波大学, 数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / 非線形光学 / 超短パルス / アト秒科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、高強度・超短パルス光と物質の相互作用によって起こる極限的な非線形・超高速現象を微視的に理解するための理論的手法の開発、及びその応用を行い、特に次の二つの研究で成果があった。 (i)定量性のある電子ダイナミクス計算手法の開発 これまで高強度・超短パルス光が物質中に誘起する電子ダイナミクスの第一原理計算には、局所密度近似(LDA)汎関数を用いた時間依存密度汎関数理論がよく用いたれてきた。しかしながら、このLDA汎関数は半導体・絶縁体の光学ギャップを過小評価してしまう問題が知られており、定量的に高強度超短パルス光と固体の相互作用を調べることが難しかった。本研究では、最近開発されたmeta-GGA汎関数及びHybrid汎関数をLDA汎関数の代わりに電子ダイナミクス計算に適用することで、光学ギャップの過小評価問題を解決し、定量性のある電子ダイナミクス計算を可能にした。この研究の成果は、論文"Nonlinear electronic excitations in crystalline solids using meta-generalized gradient approximation and hybrid functional in time-dependent density functional theory", J. Chem. Phys. 143, 224116 (2015) としてJournal of Chemical Physics誌から発表されている。
(ii)高強度・超短パルス光が物質中に誘起する非線形電子ダイナミクス この研究では、国外のいくつかの実験グループとの共同研究により、理論と実験の両面から、高強度な光のもとで起こる、物質の光学特性の超高速変化、物質中の非線形分極の実時間ダイナミクス等を調べた。物質中に誘起される非線形分極の実時間ダイナミクス、及びその微視的起源について調べた成果については、論文"Attosecond nonlinear polarization and light-matter energy transfer in solids"として科学誌Natureから出版が予定されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験グループとの共同研究において、一部の研究成果がすでに論文にまとめられ出版予定となっており、更に他の研究成果についても実験グループと議論しつつ論文をまとめる段階にまで到達しているため、当初の予定通りにおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
高強度・超短パルス光によって起こる物質中の超高速・非線形電子ダイナミクスに関する実験グループとの共同研究において、実験結果と我々の理論計算がよい一致を示すことが確認されている。また、さらに詳細な解析を行うことで、理論計算の側から現象の微視的起源が明らかとなった。今後は、現在の知見を応用して、さらに興味深い現象を見出すために、理論計算の側から実験の提案等を行っていく予定である。
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Research Products
(13 results)