2015 Fiscal Year Annual Research Report
アモルファス合金からの多孔質触媒の調製と水素生成反応への応用
Project/Area Number |
14J01514
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野﨑 安衣 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | アモルファス合金 / 多孔質金属 / 水素化反応 / 酸素酸化反応 / Pd-Zr合金 / Au-Zr合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究ではアモルファス合金の構造変化が触媒特性に与える影響について検討している。本年度は以下の2つのテーマについて検討した。 (1)Pd-Zrアモルファス合金に様々な温度で熱処理を施すことで作製した結晶度の異なる試料に対し、化学処理を行なうことで多孔質Pdを調製した。1-オクテンの水素化反応を行ない多孔質Pdの触媒特性について比較したところ、アモルファス合金から調製した多孔質Pdの触媒活性が特異的に高かった。さらに貴金属であるPd使用量削減を目的とし、Pd-Zrアモルファス合金に第三元素としてNiを添加したPd-Ni-Zrアモルファス合金から多孔質Pd-Niを調製したところ、Niを添加することで触媒活性・オクタン選択性が向上するということを見出した。 (2)Au-Zrアモルファス合金から調製した多孔質Auの触媒特性-①HF処理による表面化学組成の制御と残存Zrの影響- Au-Zrアモルファス合金を出発原料とし、様々な処理を施すことで得た多孔質Auの触媒特性について評価した。Au-Zrアモルファス合金に様々な浸漬時間でHF処理を施し残存Zr量の異なる多孔質Auを調製した。多孔質Au上でベンジルアルコールの酸化反応を行なったところ、Zrが表面に多く残存するほど触媒活性が高いことがわかった。 ②-前駆体の原子配列が多孔質Auの触媒特性に与える影響- 前駆体合金の原子配列に注目し、アモルファス合金、結晶合金それぞれから調製した多孔質Auの触媒特性について比較検討したところ、アモルファス合金から調製した多孔質Auの方が優れた触媒特性を示すことを見出した。アモルファス合金から調製することでより配位不飽和なAu原子を多く含むAuリガメントが調製でき、その結果触媒活性が向上したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本申請研究ではアモルファス合金からの多孔質触媒の調製と前駆体構造が触媒特性に与える影響について検討を行なっている。 当該年度は特に、Au-Zrアモルファス合金から調製した多孔質Au触媒について残存Zrや前駆体合金の構造が触媒特性に与える影響を調査した。高輝度光科学研究センター(SPring-8)での放射光XAFSを利用し、カーブフィッティング法により配位数・原子間距離などを算出することでAuや残存Zrの配位状態を解析し、XPS測定やSEM観察などの手法も組み合わせることで、残存Zrや前駆体構造が触媒活性に強く影響を与えることを見出し、前駆体合金の構造としてはアモルファス合金が適していることが分かった。 さらに、Pd-Zrアモルファス合金から調製した多孔質Pdの触媒特性について、前駆体構造や第三元素が触媒特性に与える影響についても検討した。様々な原子配列を有するPd-Zr合金から調製した多孔質Pdの触媒特性を比較すると、前駆体としてアモルファス合金を利用することで優れた触媒特性を示す多孔質Pdが調製できることが分かった。多孔質PdへのNi添加効果についても検討し、Pd-Zrアモルファス合金にNiを添加した合金から調製した多孔質Pd-Niは、オクテンの水素化反応において多孔質Pdよりも極めて優れた選択性を示すことがわかり、わずかなNi添加でも触媒活性や選択性を改善することができることを見出した。 これらの結果をもとに、当該年度において計2報の論文投稿や国内外学会で11件の発表を行なうなど、多くの研究成果を出している。これらの研究成果をフィードバックし、より詳細な構造解析を行うことで当該研究の更なる進展が見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
本申請研究では、アモルファス合金から調製した多孔質触媒の高活性化や構造状態と触媒活性の関連について解明することを目的としている。今後は、①高活性化に向けた構成元素・化学処理条件の検討、②構造状態解析、③エネルギーキャリアからの水素生成反応への応用の3点を主たる研究対象とする。 ①これまでの研究においてアモルファス合金から調製した多孔質金属は結晶合金から調製した多孔質金属よりも非常に微細な構造を有すことを見出している。今後は構成元素組成や化学処理条件について検討することで、更なる微細構造化や触媒活性の向上を試みる。 ②アモルファス合金の構造状態と触媒特性の関連について解明するため、高エネルギー加速器研究機構(KEK-PF) 、高輝度光科学研究センター(SPring-8)での放射光XAFSを利用し、結晶化過程にあるアモルファス合金の状態解析や,カーブフィッティング法を利用した配位数・原子間距離などの比較を行う。XPS測定やSEM観察などの手法も組み合わせることで,アモルファス合金への熱処理が触媒活性に与える影響について明確にすることを目指す。 ③近年、次世代エネルギーとして水素燃料電池が期待されているが、エネルギー源である水素は貯蔵・運搬の面で課題が残されている。現在、高水素含有化合物から水素を取り出す手法が注目されており、高性能を有する触媒の開発が必要とされている。作製した多孔質金属を用い、高水素含有化合物の一つであるアンモニアボランからの水素生成反応に応用する。①で述べた構成元素や化学処理条件を検討することで高選択性・高活性な触媒開発を試みる。
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Research Products
(13 results)