2014 Fiscal Year Annual Research Report
糖タンパク質エリスロポエチンの系統的合成と生合成経路における糖鎖機能の解明
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14J01540
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木内 達人 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 糖タンパク質合成 / 品質管理機構 / ハイマンノース型糖鎖 / UGGT |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、小胞体で行なわれている糖タンパク質の品質管理機構の解明を目的としている。この中で私はまず、フォールディングの成否を見分けるという重要な役割をしていながら、分子レベルでは未解明な部分が多いUGGTという酵素に着目して研究を行なうこととした。本研究ではこれまでの研究のボトルネックであったハイマンノース型糖鎖を持つ糖タンパク質の調製を化学合成を用いることで解決し、これまでの生化学的アプローチでは得られなかった知見を得ようと考えた。 合成ターゲットとして造血ホルモンであるエリスロポエチン(EPO)を選んだ。本年度は特別研究員採用前にすでに合成が完了していた38位に糖鎖を持つEPOに加えて、24位、83位に糖鎖を持つEPOを合成することに成功した。さらに、次年度の目標であった、3本糖鎖を持つEPOに関しても同様のルートを応用することで合成できた。合計で4種類のEPOの合成に成功したことになる。今回世界でもまだ数例しかない、分子量22000 Daを超えるサイズの糖タンパク質の全合成を達成することができた。 次に今回合成したEPOとフォールディングの成否を見分けるUGGTとのアッセイを行なった。その結果、採用前の研究である38位に糖鎖を持つEPOと同様に24、83位に糖鎖を持つ、正しくフォールディングしたEPOも、UGGTによって不良品のタグであるグルコースが転移されるという、先行研究とは異なる結果が得られた。この結果より、やはりフォールディング状態だけでなく、糖鎖欠損糖タンパク質をもUGGTは不良品と認識しているという可能性が高まった。 そこでさらに、3本の糖鎖を全て持つ、完成品であるはずのEPOとのアッセイを行なった。その結果、UGGTはこのEPOにもグルコースを転移するというさらに予想外の結果が得られた。これはこれまでの知見では説明できない新規な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は今年度中に24位、83位にハイマンノース型糖鎖をそれぞれ1本ずつ持つエリスロポエチン(EPO)2種類を合成し、そのUGGTとのアッセイを行なうことを目標としていた。しかしながら、合成が思いの外順調に進んだ結果、来年度の目標であった、3カ所全ての位置に糖鎖を持つEPOの合成とそのUGGTアッセイを達成することができた。さらに3本糖鎖を持つEPOを用いたUGGTとのアッセイにより、UGGTの新規の認識パターンを発見することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
計画よりも順調に合成が進み、来年度に予定していた合成をほぼ終えることができた。そのため、今後は合成できたEPOを用いてUGGTの認識能をさらに詳細に調べる予定である。具体的には重水素置換法などを用いることでUGGTがEPOのどの部分を認識しているのかを調べる予定である。また、必要に応じてEPO以外のハイマンノース型糖鎖を持つ糖タンパク質も合成し、UGGTが完成品のはずの糖鎖を3本持つEPOを不良品と認識した理由を調べる予定である。
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Research Products
(2 results)