2014 Fiscal Year Annual Research Report
制御性T細胞の発生、分化、維持における細胞核内分子SATB1の機能
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14J01560
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北川 瑶子 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | Treg |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、制御性T細胞(Treg)の胸腺、末梢での発生において、細胞核内因子Satb1の役割を解明することである。
T細胞特異的Satb1欠損マウス(CD4Cre-Satb1flox/floxマウス)は、自己免疫疾患を発症し、新生児にTregを移入することで大部分の症状が回避できることが明らかになった。末梢リンパ組織にTregの存在が確認されたので、まずSatb1欠損Tregの表現型と機能の解析を行った。FACS解析により、CD25+Foxp3+細胞群はTregの機能に必要な分子を発現していることがわかった。また、抑制機能、Treg分化と相関するTreg特異的DNAメチル化パターンを調べたところ、Satb1欠損末梢Tregは野生型Tregに機能的な異常がないことが示された。次に、Satb1欠損マウスの胸腺でのTreg分化に注目した。生後4日の胸腺、脾臓に存在する胸腺由来Tregの割合を調べたところ、CD4Cre-Satb1flox/floxマウスでは両組織でTregの割合、数が顕著に減少していることが明らかになった。さらに、CD4Cre-Satb1flox/floxマウスの末梢リンパ組織で見られたTregの由来を特定するため、野生型とCD4Cre-Satb1flox/floxマウスの混合骨髄キメラを作製し、胸腺由来TregのマーカーであるNeuropilin-1の発現を調べたところ、Satb1欠損状態で発生するTregのほとんどは末梢由来であることがわかった。
一方で、Treg分化後の維持においてSatb1の必要性を明らかにするためTreg特異的Satb1欠損マウス(Foxp3Cre-Satb1flox/floxマウス)の解析も進めた。新生児、成熟マウス共にTregの割合、表現型に異常は見られず、少なくとも定常状態ではTregの分化後にSatb1が不必要であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度はT細胞特異的Satb1欠損マウスで見られる自己免疫疾患がTreg移入により回避できることがわかり、さらにSatb1が胸腺でのTreg発生に必須であるということまで明らかになった。
当初の計画では、Satb1欠損マウスの自己免疫疾患発症の原因を探るため、Tregの機能解析を進めるつもりであったが、解析の結果、機能に異常がないことがわかった。そこで、胸腺、末梢由来Tregの発生を分けて調べることでSatb1が胸腺由来Tregの発生に必要であることがわかり、Satb1欠損マウスの自己免疫疾患の原因を同定することができた。胸腺、末梢でのTreg発生においてSatb1の必要性が違うということは予想外の結果で、今後Treg発生の分子メカニズムを解明する糸口になると考える。また、Tregの維持におけるSatb1の機能についても計画通り解析が終わり、胸腺、末梢Tregの発生、維持におけるSatb1の必要性を明らかにすることができた。以上の結果から、当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果から、Satb1は胸腺でのTreg発生に必須である一方、末梢でのTreg分化には必要ないことが示唆された。当初はSatb1欠損Tregの機能に異常があることを考慮して遺伝子発現解析などを行う予定であったが、FACS解析によりその可能性が低くなったので取りやめることとする。代わりに、Satb1が関わっている可能性が高い、胸腺Treg発生の分子機構に重点を置いて今後研究を進めていく。具体的には、胸腺Treg前駆細胞の割合、その遺伝子発現、Tregへの分化能などを調べる。分子レベルでは胸腺由来Treg発生時にSatb1が制御する遺伝子を見つけるため、Satb1のクロマチン免疫沈降を行いたい。
また、末梢でのTreg分化におけるSatb1の役割を同定するつもりである。胸腺でのTreg発生に影響を与えずに末梢でのTreg分化時にSatb1を欠損させるため、成熟したCD4+T細胞特異的にCre recombinaseを発現するThpokCreとSatb1-floxマウスを交配し、解析を行う。
以上の研究を通して胸腺、末梢でのTreg発生におけるSatb1の役割の違いを解明し、Treg発生の分子メカニズムのより深い理解に繋げたい。
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Research Products
(6 results)