2014 Fiscal Year Annual Research Report
学齢期超低出生体重児の読みやプロソディ理解と発達障害特性の定量的検討
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14J01571
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井﨑 基博 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 極低出生体重児 / 視線行動 / コミュニケーション / 読み / 注意 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、出生体重が1500g以下の極低出生体重(VLBW)児がプロソディや顔を手がかりとして心を読む能力と文字を読む能力について調べることを目的としている。先行研究によるとVLBW児は注意機能に問題をもっており、そのことが心を読むことや文字を読むことに影響を与えているのではないかと考えられているが、まだよくわかっていない。さらに、VLBW児が心を読むことや文字を読むことに困難があるとして、心を読むまたは文字を読むときにどのように情報のデコーディングを行っているのか、またでコーディングする際の情報への注意のむけ方に特徴があるのかについてはほとんどわかっていないので、これを検証することは重要な意義がある。 注意機能については、TEA-Chという認知神経心理学検査を用いた。この検査はおそらく日本で初めて施行された検査である。この検査の下位項目のほとんどでVLBW児は標準体重(NBW)児よりも成績が低かった。 つづいて、会話の中のプロソディ情報(抑揚などのことばのリズムの側面)から相手の心を読む課題では、VLBW児の成績はNBW児に比べて有意に低かった。また、課題遂行時の視線の動きの測定では、VLBW児はNBW児に比べて会話相手の目を見る時間が有意に短かった。また、VLBW群内では、課題の成績は年齢により成績が上がったが、視線行動に年齢による差は認められなかった。 最後に、文字を読む能力についてであるが、小学2~3年のVLBW児(年少群)と小学5~6年のVLBW児(年長群)の読字能力を比較すると、年長群のほうが読字能力は高く、能力のキャッチアップが認められた。NBW群との比較は今後行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学齢期極低出生体重児の心を読むことと文字を読むことに関する行動特性について、実験的手法および神経心理学的検査を用いて明らかにすることができたので、おおむね順調だと考える。 研究対象であるVLBW児および比較群児の募集に関して実験計画段階で必要と考えていた人数をクリアすることができた。また、実際の計測に関して滞りなく進めることができ、十分なデータを収集することができた。 研究テーマについては、当初はプロソディの理解のみに限定していたが、もっと幅広く心を読むことというテーマに拡張することができ、この点においても研究の進展が認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
学齢期極低出生体重(VLBW)児の心を読む能力と文字を読む能力について、標準体重児とは異なることについては明らかにすることができたので、今後は以下の3点について研究を深めていきたいと考えている。 ① 注意機能と心を読むことおよび文字を読むことの関連についての検討を行う。具体的には、TEA-Chの結果とアイトラッカーによる心を読む実験や文字を読む実験の結果との関連について明らかにしたい。 ② 視線行動の時系列分析を行う。上記実験で得られた視線データについては、VLBW児の全体的な傾向については調べることができたが、詳細な視線行動についてはよくわかっていない。最新の分析手法を習得し、時系列での視線行動の特徴を検証する。つまり、どのようなタイミングで会話相手の目を見ようとする(または、見ようとしない)のかについて明らかしたい。 ③ VLBW児の注意機能に影響を与える因子の検討を行う。VLBW児がどうして注意機能に問題を持つのかということも検証したいと考えている。低出生体重で生まれることによる誕生時の脳損傷などが注意に与える影響について明らかにしたい。
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Research Products
(8 results)