2015 Fiscal Year Annual Research Report
旧人類との交雑で獲得した現代人の免疫遺伝子の起源とその拡散要因・過程の解明
Project/Area Number |
14J01601
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安河内 彦輝 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | HLA / 旧人類 / デニソワ人 / ネアンデルタール人 / 交雑 / 平衡選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,旧人類との交雑で獲得した遺伝形質が,現代人に拡散した要因や過程を解明することである.前年度は報告書の通り,実験設備整備のために当初の計画を変更し,熱帯熱マラリア原虫の分子進化について研究を行なった.本年度はこの研究成果が国際雑誌に掲載された.そして,当初の計画通り,旧人類由来のHLAアリルなどの起源の推定を行なった.結果から述べると,本研究ではそれらHLAアリルが旧人との交雑によって現代人が獲得したという仮説を支持する証拠は示されなかった. 旧人類デニソワ人との交雑で,現代人に伝播したとされるHLA-B*73アリルは,その他のHLA-Bアリル間と塩基配列が非常に異なることから,別のHLA-B遺伝子座に由来することが先行研究で示唆されている.そこで,データベースにある6つのHLA遺伝子座内のアリル間の遺伝距離を算出して,それらを比較した.その結果,HLA-B*73を含むHLA-Bアリル間の遺伝距離が,他の遺伝子座に比べて著しく高いことはなかった.これは,平衡選択が働くHLA遺伝子では,HLA-B*73とその他HLA-Bアリル間ほど塩基配列が異なることは十分起こり得ることを示す. 次に,データベースを用いて,世界中の集団のHLA-B*73アリル頻度を調べた.その結果,デニソワ人と交雑が起きたとされる西アジアで頻度が高いということはなかった.また,デニソワ人の他のHLA-Bアリルも西アジアにはなかった.旧人類ネアンデルタール人では,調べたHLA遺伝子は全てヘテロであり,平衡選択がHLAアリルの多様化に影響していることが示唆された.しかし,この旧人類3個体のHLAアリルはすべて同じ遺伝子型であった.これは,現代人のDNAが混入している可能性があることを示唆する.これらの結果から,現代人のいくつかのHLAアリルが旧人由来であるという仮説は,議論の余地があることが示された.
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Research Progress Status |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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