2014 Fiscal Year Annual Research Report
GKM理論による旗多様体の整係数同変コホモロジーの決定
Project/Area Number |
14J01614
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 敬志 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
Keywords | GKM理論 / 旗多様体 / Leray-Hirschの定理 / Coxeter群 |
Outline of Annual Research Achievements |
学振特別研究員採用年度以前に得られた結果であるGKM理論版のLeray-Hirschの定理を同変特異コホモロジー論から同変一般コホモロジー論へ一般化することを考察し、特に同変K理論の場合には特異コホモロジー論の時と同様にLeray-Hirschの定理が成り立つことを示した。GKM理論とは旗多様体などの同変コホモロジー環を対応するLie群のWeyl群やルート系を用いて記述できるというもので、この定理は(一般)旗多様体からなるファイバー束に関するものである。 GKM理論自体を一般化することを考察した。GKM理論で用いたWeyl群を有限Coxeter群に拡張することを考察した。特に二面体群の場合にGKM理論版のLeray-Hirschの定理を用いて、アナロジーで与えられる次数付き環を決定した。これはあくまで形式的なアナロジーであり、対応する旗多様体は通常の意味では定義されない。しかしながらある状況下でCoxeter群をWeyl群として持つかのように振る舞うH空間が既に知られており、そこから対応する「旗多様体」を定義することができる。特に二面体群の場合には、アナロジーで与えられた次数付き環とこの定義された「旗多様体」のコホモロジー環は、同変コホモロジーではなく通常のコホモロジーのレベルでなら一致することを示した。 今までは1/2が存在する係数でしか決定されていなかったC型の旗多様体の同変コホモロジー環を整数係数で決定することに成功した。 共同研究として京都大学の岸本大祐准教授と蓮井翔氏と共に、quasitoric多様体を1回サスペンションすると素数pに対してp-局所的に(p-1)個の空間に分解できることを示した。また彼らと同志社大学の河野明教授と共にランク2の非単連結なリー群の4次元球面上のゲージ群の分類を完了した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の1年目の目標としてGKM理論的なファイバー束を解析する手法の確立を目指していたが、それはGKM理論版のLeray-Hirschの定理としてかなり満足のいく形で達成された。厳密に言えば、これは同変コホモロジー環のH*(BT)-代数としての生成元と関係式までを与えるものなので、環の具体的な表示を可能にする。この定理の応用としてE_6型の旗多様体の同変コホモロジー環を具体的に明示的な形で与えることに成功している。残るE_7型とE_8型についても計算の手法については、E_6型の時の手法を使えると考えており実際の障害はその計算量だけである。 また、2年目以降の計画としてK理論への応用を考えていたが、具体的な計算はまだ行っていないものの、その足がかりとして十分な同変K理論でのGKM理論版のLeray-Hirschの定理を得た。 古典型の旗多様対として唯一残っていたC型の旗多様体の整数係数同変コホモロジー環を決定した。 当初の研究計画には無かったが、Coxeter群へのGKM理論的なアプローチを開始し、上手く働くだろうという証拠を特に二面体群の場合に得た。それはある条件下で旗多様体のコホモロジー環がWeyl群に関する不変式で割った環になるという事実との一致である。この研究は一般化された「旗多様体」上でシューベルト・カルキュラスを行うことにつながる。 また、これも当初の研究計画には無かったが、共同研究としてquasitoric多様体とゲージ群に関する結果を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
有限Coxeter群の型をもつ一般化された「旗多様体」にGKM理論を拡張・応用することを主に研究する。まずはそこへGKM理論が適用できることを確認するため、証拠集めを行う。具体的には、通常の旗多様体の同変コホモロジー環を決定した時のアナロジーで得られた有限Coxeter群に対応する次数付き環が、適当なp進係数で定義される「旗多様体」の同変コホモロジー環と一致することを証明する。後者は通常の代数的位相幾何学の枠組みで計算できるものである。 次に一般化された「旗多様体」にBruhat分解を導入する。有限Coxeter群に対応する次数付き環には、通常の旗多様体の時に部分多様体のPoincare双対として得られた同変コホモロジー環の元のアナロジーである元が定義できるので、「旗多様体」には有限セル複体の構造を入れることが可能だと考える。これにより一般化された「旗多様体」上でシューベルト・カルキュラスを行うことができるだろう。一度シューベルト・カルキュラスが可能になれば、今まで行われてきたその代数幾何的・組合せ論的・表現論的な取り扱いをより一般的に再構成することができる。 また、当初の予定通りE_7型やE_8型の旗多様体の整係数同変コホモロジー環の決定も試みるが、これについては以前の研究計画の通りである。ただし、E_7型をE_6型で割ったエルミート対称空間の計算について進展があったので、既に決定したE_6型の旗多様体とこのエルミート対称空間から求める道筋も浮かんできた。
|
Research Products
(3 results)