2015 Fiscal Year Annual Research Report
触媒反応を利用した純水のみによる超精密表面加工法の開発
Project/Area Number |
14J01623
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
礒橋 藍 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | エッチング / 加水分解 / 触媒 / 遷移金属 / ガラス / 炭化珪素 / 窒化ガリウム / 研磨 |
Outline of Annual Research Achievements |
新たな表面処理技術として触媒反応に基づくエッチングを利用した研磨法の開発を推進してきた.本手法では純水中に浸漬した固体触媒を基準面として用い,触媒近傍のみで進行するエッチング反応を利用して被加工物への基準面転写を行う.昨年度は申請時の計画に沿い,「加工原理の解明」,「加工速度の向上」を主たる目的に定め,評価実験を行ってきた.加えて,初年度に得た「触媒表面の水素終端化による触媒被覆物の除去」,「Niなどの遷移金属を触媒とした場合に加工能率が向上する」といった成果に対しての追加評価も実施した. 加工速度の解明に向け,第一原理分子動力学に基づく計算機シミュレーションを共同研究者と共に進めた.本手法の加工原理は材料に依存せず同一であり,加水分解反応であると予想した.被加工物を構成する結合に対する直接的な加水分解は室温では進行しない事は既知であり,我々は触媒を介した間接的な加水分解反応を考案した.その結果,室温においても十分進行しうる反応経路の実証に成功した.本結果において,触媒の表面状態が著しく加工速度に影響することが示された.そこで,加工速度の向上を目指し,触媒金属の表面状態の制御を試みた.具体的には溶液pHおよび金属電位を制御する事で統計的な評価を実施した.酸化物材料に対しては金属のベア表面を維持することで,炭化珪素や窒化ガリウムなどその他結晶材料に対しては触媒上に酸素吸着が進行する状態におくことで加工速度が向上することが明らかとなった.基本的には金属自身の加工対象物との接触により加工は最も効率よく進行するが,非酸化結晶に対しては吸着酸素による酸化反応を利用する事で不安定な酸化物構造の形成,除去が繰り返されることで加工速度が向上したと考えた.また,初年度に得た成果に対する追評価としては水素水による触媒表面の洗浄,Niめっき技術を応用した加工雰囲気下における成膜法の評価を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請段階で予定していた昨年度の実施項目は十分に達成されたと考えられる.本手法を加工技術として確立していく上で必要な実験評価は全て,除去反応の本質を捉え,その反応をいかに促進,応用変化させるかという点に集約される.そういった意味で,昨年度の計算機シミュレーションによる加工原理,触媒を介した間接的な加水分解反応の論理的実証は非常に大きな意味を持つ.本知見に基づいた加工速度の向上,という点でも十分な成果を得ている.さらに,研究実績にも簡単に記したが,初年度に追加的に得た成果に対して更なる追加評価を実施し,申請時には想定しえなかった汎用性の高い技術への展開が期待される状況となっている.初年度ではPtよりも低コストで触媒作用に優れるNiの有用性を明らかにしたが,安定的使用には問題があると考えていた.しかし,めっき技術の応用により,加工と触媒成膜を同時に行う事でこの問題はクリアされつつある.本成果により,実用化へ大きく近づく事に成功したといえる.
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度は当初の計画とおり,多段階研磨工程の一貫化を目指し,昨年度までに得られた各要素技術のより効率的な利用法を検討,評価する予定である.それと同時に,「Niが優れた触媒作用を有すること」,「触媒金属の制御には電気化学的手法が適していること」,「間接的な加水分解反応が本手法の加工原理であること」などの知見に基づき,より高効率な反応を実現可能な新規反応系を目指し,添加剤や反応温度,紫外光の利用などを検討する予定である.また,本手法を適用する事による半導体素子のデバイス性能やレンズなどの光学特性への影響を外部研究機関との連携を通じて評価する.
|