2014 Fiscal Year Annual Research Report
地球磁気圏における低周波波動と粒子の非線形相互作用について:複数衛星を用いた研究
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14J01637
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 紗都子 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 内部磁気圏 / プラズマ波動 / 波動粒子相互作用 / THEMIS衛星 / Van Allen Probe |
Outline of Annual Research Achievements |
地球磁気圏における高エネルギー粒子のダイナミクスと関係していると予想されている、電磁イオンサイクロトロン(EMIC)トリガード放射と呼ばれる電磁波動の周波数変動現象について解析を行った。 ①THEMIS衛星の5年間の磁場データを用いたイベント分類によって、発生位置分布・磁気圏の擾乱指数との関係を解析した。EMICトリガード放射はこれまでプラズマ圏近傍における3例ほどの報告しかなかったが、プラズマ圏外部で50例以上の明瞭なイベントを確認した。従来の予想に反して、EMICトリガード放射は昼側磁気圏界面付近でよく発生していること、磁気圏擾乱によるプラズマ圧上昇よりも太陽風動圧による磁気圏圧縮と関係していることを示した。以上の結果を英文学術論文誌(J. Geophys. Res.誌)に投稿し、受理・出版された。 ②EMICトリガード放射の周波数・振幅変動について解析を行った。EMICトリガード放射の性質は単純な“周波数上昇”であると捉えられていたが、その内部にサブパケットという微細構造を持つものがあることを観測的に確認した。周波数上昇は数ステップの段階に分かれており、各ステップがプラズマ波動方程式から導かれる非線形時間発展の関係式とよく一致することを示した。以上の成果を学術論文誌(J. Geophys. Res.誌)に投稿した。 ③Van Allen Probes衛星の磁場・粒子データを用いて、EMICトリガード放射の強度と放射線帯のMeV電子フラックスを比較した。2例のイベントで、EMICトリガード放射の発生に合わせてMeV帯電子のフラックスがおよそ30%減少していることを明らかにした。フラックスの減少が見られる電子のエネルギー帯とEMICトリガード放射の周波数帯に関係があることも示し、この関係は相対論的サイクロトロン共鳴エネルギーとよい一致を見せることを確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
THEMIS衛星、Van Allen Probes衛星を用いたEMICトリガード放射のイベント解析は順調に進んでいる。多様なスペクトルを持つイベントや現象の詳細なスペクトル解析を元に、生成メカニズムの考察や理論式との比較を行った。THEMIS衛星を用いた統計解析によるEMICトリガード放射の発生頻度や分布については、トリガード放射の多様なスペクトルやEMIC波の周波数帯に存在する衛星のスピンノイズなどによりイベントの機械的なピックアップが難航している。 また当初の予定と異なり、Van Allen Probesで観測されたhissの非線形発展の共同研究も行ったため、当初の予定とは研究内容が異なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続きTHEMIS衛星、Van Allen Probes衛星を用いたEMICトリガード放射とhissの解析を行う。 現在進行中のVan Allen Probes衛星で観測されたEMICトリガード放射とMeV電子フラックス変動の相関関係についてより詳細に確かめ、論文にまとめる。また難航しているEMICトリガード放射のピックアップを完成させ、EMICトリガード放射の発生頻度や通常のEMIC波とEMICトリガード放射の違い、またRising-toneとFalling-toneなど様々なスペクトルのイベントの性質の違いなどを明らかにする。
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Research Products
(8 results)