2015 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質N末端アセチル化による選択的ミトコンドリア分解の制御
Project/Area Number |
14J01682
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
英山 明慶 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | ミトコンドリア / マイトファジー / オートファジー / タンパク質N末端アセチル化 / 出芽酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は出芽酵母を用いて、ミトコンドリアの品質管理機構の一つである選択的ミトコンドリア分解(マイトファジー)のメカニズムの解明を目指している。その中で、網羅的スクリーニングにより見出されたマイトファジーの新規制御因子の候補であるタンパク質N末端アセチル化酵素NatAに着目し、解析を行っている。これまで、NatAを欠損した細胞ではマイトファジーが強く抑制されることがわかっている。また、NatA欠損細胞ではミトコンドリアが液胞へ取り込まれないことも確認していた。そこで、NatAがマイトファジーのどこの制御に関与するか詳細な解析を行った。NatAのサブユニットであるNat1とArd1の発現量を調べたところ、両者とも呼吸増殖では、その発現量が減少することがわかった。このことからNatAがマイトファジーの初期段階の制御に関与していることが考えられ、ミトコンドリアが隔離膜で囲まれた構造体(マイトファゴソーム)の形成について解析を行った。結果として、NatA欠損細胞ではマイトファゴソームの形成が損なわれていることがわかった。よって、NatAがマイトファゴソーム形成の制御に関与していることが明らかとなった。 次に、マイトファゴソーム形成に必須なAtg32について解析を行った。過去の解析からNatA欠損細胞ではAtg32の発現量が減少することを突き止めている。そこで、Atg32の局在と相互作用についても解析を行った。結果、NatA欠損細胞ではAtg32は野生型と同様のミトコンドリア局在とタンパク質間相互作用を示した。よって、NatAはAtg32の発現制御のみに関与していることが明らかとなった。また、NatA欠損細胞でAtg32の発現量を上昇させると、マイトファジーが部分的に回復したことから、NatA欠損によるマイトファジーの強い抑制は、Atg32の発現量の低下が一つの要因であることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究において、NatAのマイトファジー制御に関与する詳細な知見をより得ることができた。 NatA欠損細胞ではミトコンドリアが隔離膜で囲まれるマイトファゴソーム形成に障害があることが明らかとなり、NatAが作用するマイトファジーの制御ステップを詳細に突き止めた。そのマイトファゴゾーム形成に必須のタンパク質であるAtg32の機能制御についても、前年度よりさらに踏み込んだ解析を行った。その結果、NatA欠損細胞ではあAtg32の局在や相互作用に影響はなく、発現量のみが影響を受けることがわかった。NatA欠損細胞ではAtg32の発現レベルが低下する。反対に、NatA欠損細胞でAtg32の発現量を上げるとマイトファジーが部分的に回復することもわかり、NatAがAtg32の発現制御を介してマイトファジーのコントロールに関与していることが確からしくなった。よって今期までの研究で、NatAのマイトファジーへの作用ポイント、そしてその分子メカニズムの一端を解明することができた。そしてこれらの研究成果は原著論文として国際学術雑誌のJournal of Biological Chemistryに掲載された。このように、当初に計画していた予定よりも、早く研究が進んでいると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
NatAのターゲットでマイトファジーの制御を担う因子を同定するため、ミトコンドリアに局在するタンパク質の準網羅的な解析を行った結果、NatA欠損細胞では代謝制御に関与するタンパク質の発現パターンが大きく変動していることも本年度の研究で明らかとなっている。よって、今後はミトコンドリアの機能とNatAとの関わりに着目して研究を行う必要がある。そこで、ミトコンドリアの酸素消費量やATP産生能などを指標とし、細胞外フラックスアナライザーを用いてNatA欠損細胞のミトコンドリアの機能を野生型と比べて評価する。 NatA欠損細胞ではAtg32の発現量が減少することから、NatAがAtg32の発現制御に関与することが示唆されている。そして、これら両者の関係性を詳細に解明していくには、前提として、Atg32の発現制御全般を理解していくことが必要である。Atg32は細胞の呼吸増殖が進むにつれて、その発現レベルは一過的に上昇するが、一定の時間が過ぎれば反対に発現レベルが減少していくことが知られている。よって、NatAが欠損することでAtg32の減少制御が促進することが考えられる。タンパク質の減少制御では第一に、ユビキチン・プロテアソーム系の分解制御が考えられる。そこでまず、Atg32がユビキチン化制御を受けているどうかを調べ、プロテアソームによる分解制御の可能性について解析を行っていく。もし、Atg32がプロテアソームにより分解制御を受けていた場合は、NatA欠損細胞でAtg32のユビキチン化が増強されるか明らかにしていく。
|
Research Products
(3 results)