2014 Fiscal Year Annual Research Report
モデル線虫を用いた昆虫病原性線虫の共生細菌が発揮する病原性の解析
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14J01687
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
佐藤 一輝 鹿児島大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 昆虫病原性線虫 / Photorhabdus luminescens / Caenorhabditis elegans / 病原性メカニズム / 病原性変異株 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に細菌食性線虫Caenorhabditis elegansをモデル宿主とした昆虫病原性細菌Photorhabdus luminescens TT01の病原性変異株の探索ならびに表現型解析を行なった。これまでの研究でP. luminescensはC. elegansに対する致死効果と共に幼虫の発育阻害効果を示すことを明らかにしていたことから、C. elegansの第1期幼虫(L1)の変異株上における発育の可否を基準としたスクリーニング法を確立した。本スクリーニング法により、トランスポゾンの挿入によって作製した700株のP. luminescensの変異株ライブラリから特に病原性の減弱が顕著な病原性変異株2株を得ることに成功した。これら病原性変異株の原因遺伝子の同定を行うとともに、C. elegansに対する病原性の表現型について、野生型株及び病原性変異株上でのL1の成長に伴う体サイズの変化と成虫の生存時間によって量的に評価した。その結果、変異株では幼虫の発育阻害効果とともに致死効果についても減弱していることがわかり、本スクリーニング法で致死性に関わる遺伝子も探索可能であることが示された。 本研究では、昆虫病原性細菌P. luminescensの病原性をC. elegansを宿主として評価することにより、昆虫を宿主とした実験系では困難であった大量の細菌変異株のスクリーニングを安価で、迅速かつ容易に行うことを可能にした。本スクリーニング系で得られた変異株を用いてさらなる表現型解析を進めるとともに、原因遺伝子がどのように病原性に関与しているのかを明らかにしていくことで、P. luminescensの病原性の全容解明に向けた知見を得ることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
C. elegansを宿主としたP. luminescens変異株の病原性スクリーニング法を確立し、P. luminescens変異株ライブラリから病原性変異株を分離することに成功した。また、これらの変異株における原因遺伝子の同定とC. elegansに対する病原性の表現型解析を行なった。このように新規病原性遺伝子の探索については当初の計画以上に進展していると言える。一方で、P. luminescensの生産する殺線虫物質のスクリーニングに関しては、研究を進める上での課題が幾つか見つかり、当初の計画よりもやや遅れている。以上の点から、全体的に見て研究はおおむね計画と同じペースで進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
C. elegansによるスクリーニングで得られた病原性変異株について、昆虫に対する病原性といった表現型の評価を進めつつ、原因遺伝子が病原性において果たす役割について解析を行なう。また、殺線虫物質ではなく、P. luminescensに対するC. elegans耐性変異体の作出などの代替案の実施を検討している。
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Research Products
(7 results)