2015 Fiscal Year Annual Research Report
直鎖状ポリユビキチン鎖生成異常による炎症発症機構の解析
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14J01829
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 覚司 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 直鎖状ポリユビキチン鎖 / プログラム細胞死 / 炎症 / NF-kappaB |
Outline of Annual Research Achievements |
直鎖状ポリユビキチン鎖を選択的に生成するユビキチンリガーゼ複合体・LUBACは、ユビキチンリガーゼ活性を有するHOIPと2つの調節性サブユニットであるSHARPINとHOIL-1Lからなる。これら2つの調節性サブユニットはアミノ酸配列の相同性が高い機能的ドメインを有するにも関わらず、SHARPINを欠損したcpdmマウスは慢性増殖性皮膚炎を発症する一方で、HOIL-1Lを欠損したマウスは顕著な表現型を示さないように、表現型が大きく異なるため、SHARPINとHOIL-1Lの機能的差異に着目してSHARPINの機能解析を進めた。前年度までの解析では、cpdmマウスの皮膚にはapoptosisおよびnecrosisに特徴的な形態を呈する表皮角化細胞が存在することを電子顕微鏡を用いて確認しており、本年度はこれらの細胞死が、調節されたプロセスを経て実行されるプログラム細胞死の特徴を備えていることを免疫染色学的解析により確認し、SHARPINがapoptosisおよびnecroptosisを抑制する機能を有している可能性を示した。また、これまでに、SHARPINとHOIL-1LはいずれもそれぞれのUBLドメインを介してLUBACを安定化し、NF-kappaB活性化に関与することが示されていたが、本年度はさらに、SHARPINが、NZFドメインを介して活性型TNF受容体に形成されるK63鎖ポリユビキチン鎖を認識することで、NF-kappaB活性化やプログラム細胞死の制御に関与していることを明らかにした。HOIL-1LのNZFドメインにはK63鎖ポリユビキチン鎖を認識する作用はないため、HOIL-1LとSHARPINとのプログラム細胞死抑制における機能的差異は、それぞれのNZFドメインを介したユビキチン認識能の違いによるものであることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度はこれまでの解析結果をまとめ、国内・国外の学会および国際的学術誌へ発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
LUBACの調節サブユニットであるHOIL-1LおよびSHARPINにはいずれもそれぞれのUBLドメインを介してHOIPの安定性を制御する機能があることが明らかになっているが、今年度の解析結果から、HOIL-1LのUBLドメインの方がSHARPINのUBLドメインよりもHOIPの安定化により大きく寄与する可能性が示唆された。一方、HOIL-1L欠損マウスは顕著な表現型を示さないものの、HOIL-1Lを欠損したヒト家系では自己炎症性症候群や免疫不全、糖原病などを発症することが知られている。HOIL-1L欠損マウスではHOIL-1LのUBLドメインよりもC末端にあるRING1ドメインに変異が入っているのに対して、HOIL-1Lを欠損したヒト家系ではHOIL-1LのよりN末端側に変異が入っているために、HOIL-1Lを欠損したマウスとヒトとで異なる表現型を呈している可能性を考え、HOIL-1LがHOIPを安定化する上で重要だと考えられるUBLドメインに遺伝子改変を加えてHOIL-1Lを欠損させたマウスをCRISPR/Cas9システムによる遺伝子改変操作により作製している。これまでに引き続き、このマウスの表現型の解析をさらに進める予定である。
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Research Products
(6 results)