2014 Fiscal Year Annual Research Report
ヨーロッパにおけるジプシーの「統合」の可能性と限界に関する文化人類学的研究
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14J01847
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
左地(野呂) 亮子 広島大学, 社会科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | フランス共和主義 / ジプシー/ロマ / マイノリティ / 語り / ノマディズム / 定住化 / 統合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、フランスのジプシー/移動生活者を主な事例として、ヨーロッパにおけるジプシーの「統合」の可能性を明らかにすることである。具体的には、(a)フランスにおいて近年新たに取り組まれている移動生活者のための居住政策(「適合住宅」政策)の背景と実態を通して「差異の実現」の問題を、ならびに(b)ジプシーの主流社会に向けた自己呈示の一様態である「語り」の実践を通して「差異の承認」の問題を検証する。それにより、「国民」でありながらもこれまで「二級市民」とされてきたジプシーが、いかにその差異を実現し承認されつつ、「十全たる市民」となることが可能なのかを問い、ヨーロッパのジプシーの「統合」をめぐる「差異」と「平等」の共存へ向けた問題提起をおこなう。
本年度は、まず、当該分野に関する先行研究文献の収集として、ジプシー/移動生活者研究にかかわる文献調査に加え、フランスにおける共和主義やマイノリティの社会的統合に向けた政策の現代的動向を探るための文献収集と分析を重点的におこなった。また、フィールドワークによる一次資料の収集と分析のため、フランスの各地域を訪れ、適合住宅政策とジプシーの「語り」にかかわる資料収集をおこなった。適合住宅政策に関しては、移動生活者支援団体や地方当局関係者、およびジプシー/移動生活者への聞き取り調査と適合住宅の実地調査をおこなうことにより、適合住宅政策の背景と実態を理解するための十分な資料を得ることができた。「語り」に関する調査では、ジプシーの「語り」が集団的差異を過度に主張することなく、フランス人としての歴史性や普遍性に訴える性質をもつことが明らかになり、「エスニシティの政治」とは異なる側面をもつジプシー/移動生活者の主体化について考察を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献調査、ならびにフィールドワークによる資料収集を順調に進めることができた。また、本テーマにかかわる複数の研究発表を国際学会、および国内の学会と研究会にておこない、人類学を含めた様々な専門領域に属する研究者から本研究に対する意見を得て、研究課題を深化させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究でも引き続き文献調査とフィールドワークによる資料収集をおこない、その分析と成果を国内外における研究会、学会にて発表することを方針とする。
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Research Products
(4 results)