2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J01854
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
牧 功一郎 京都大学, 再生医科学研究所, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | メカノセンシング / 原子間力顕微鏡 / ナノフィッシング / 1分子 / 細胞間接着結合 / αカテニン / リモデリング / バイオメカニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,発生期の形態形成や創傷治癒などの過程において,細胞間張力が局所で増加するフィードバック機構が示唆されている.特に,接着結合の構成分子であるαカテニンは,張力作用下で生化学シグナルを誘導するメカノセンサとして,細胞間張力の増加に寄与する.本研究では,1分子引張実験(ナノフィッシング)を基盤として,接着結合のリモデリングを誘起する分子メカニズムの解明にアプローチしている.平成26年度は,初段階として,接着結合のリモデリング過程を想定した1分子実験環境を構築し,接着結合構成分子の力学的挙動解析を行った.接着結合のリモデリングは,1)構成分子(βカテニン・αカテニン)への張力負荷,2)αカテニンの立体構造変化,および,3)αカテニンへのビンキュリン結合,により達成されることから,以下の検討を行った.1)接着結合の構成分子であるβカテニンおよびαカテニンに対して,原子間力顕微鏡(AFM)を用いたナノフィッシングを行った.その結果,βカテニンは1nNを超える張力作用下においてもアンフォールディングしない(ほどけない)が,αカテニンは数十pNの張力作用下で複数の中間状態を遷移しながらアンフォールディングすることが明らかとなった.2)αカテニンの詳細なアンフォールディング過程を明らかとするため,野生型αカテニンに加え,自己阻害構造を形成しない変異型αカテニンに対してナノフィッシングを行った.その結果,αカテニンは,自己阻害構造の解放後,張力の作用に対しアンフォールディングしにくい状態(待ち状態)に遷移することが明らかとなった.3)αカテニンの待ち状態がビンキュリン結合に与える影響を検討するため,待ち状態をとる変異型αカテニンにビンキュリンを結合させた後,張力を負荷する実験を行った.その結果,待ち状態のαカテニンとビンキュリンは,力学的に強固な分子複合体を形成することが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私は,接着結合におけるメカノセンシング機構の解明を目的として,1分子ナノフィッシングを基盤とした研究を進めております.平成26年度は,接着結合を構成するメカノセンサ分子の力学的挙動に関して重要な知見を得ました.本研究成果に基づき,国際学術誌にて論文を発表したほか,国際学会で3件,国内学会で1件の計4件の学術会議で研究発表を行いました.また,ナノフィッシング技術の推進が認められ,国内誌「細胞工学」への寄稿の機会を頂きました.現在は,メカノセンサと生化学シグナルが連成した分子機構を提案する学術論文を執筆中です.本研究では,1分子レベルの実験と理論が相補的に組み合わさった研究手法の確立を目指しており,さらなる研究の進展が見込まれます.以上のことから,平成26年度は,おおむね順調に研究が進展したものと考えます.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,接着結合の構成要素であるαカテニン,および,βカテニンの張力作用下における力学的挙動を明らかにしました.特に,メカノセンサであるαカテニンは,張力作用下で自己阻害構造を解放した後,力学的にほどけにくい「待ち状態」に遷移し生化学シグナルを誘導することが示唆されました.今後は,原子間力顕微鏡(AFM)を用いた1分子ナノフィッシングと全反射顕微鏡(TIRFM)を用いた1分子観察が複合した実験系による解析を進める予定です.1分子観察実験はすでに始めており,現在は,標的分子と基板の非特異的吸着を防ぐための実験条件の検討を行っております.メカノセンサの分子構造変化と生化学シグナル誘導の関係をつぶさに探ることで,接着結合のリモデリング現象を説明する新しい分子機構の提案を目指します.
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Research Products
(10 results)
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[Book] 細胞工学2014
Author(s)
牧功一郎,安達泰治
Total Pages
Vol.33, pp.917-921
Publisher
秀潤社