2014 Fiscal Year Annual Research Report
革新的なチタン製錬の確立に向けたチタン塩化物の還元機構に関する基礎的研究
Project/Area Number |
14J01949
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岸本 章宏 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 金属熱還元 / その場観察 / 塩化チタン |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、四塩化チタンをマグネシウムによって還元することでチタンは生産されているが、その生産速度は非常に遅い。このよう低い生産性を向上させるには、反応容器の設計や操業条件の改善が求めらる。しかし、四塩化チタンの還元反応に関する知見が不足しているため、生産性の改善には至っていない。そこで、本研究では上述の還元反応のメカニズムを明らかにするため、以下に示す2つの手法を用いて世界で初となる還元反応のその場観察に着手した。 まずは透明容器内で四塩化チタンの還元反応を可視光によって観察した。無色透明なマグネシア単結晶と軟鋼材で作製した反応容器にマグネシウムを充填し、石英反応管内に設置して900℃で四塩化チタンと反応させた。四塩化チタンとの反応直後、反応管内には白い靄が発生し、反応物と接触していない石英反応管までも黒色に変色した。これは、四塩化チタンの還元反応に伴う発熱が激しく、また反応が非常に速く進行するために、蒸気圧の比較的大きなマグネシウムや副生成物である塩化マグネシウムが揮発したことが原因であると考えられる。 このように蒸気圧の大きな化学種の反応を可視光を用いて観察することは難しい。そこで、次の手法としてX線を用いた反応観察に着手した。この手法ではX線を対象物に照射し、透過したX線を受光器で検出する。このとき、対象物の吸収係数によって透過X線の強度が変化するため、受光器側で透過X線の強度を映像の明暗へと変換し、対象物内部の様子をレントゲン写真のように映像化できる。このような手法を用いて、実際にニッケル容器内の溶融塩にチタン板を浸漬し、室温でX線による容器内部の観察を行った。その結果、得られた映像からチタン板や塩の有無を確認できたため、四塩化チタンの還元反応の様子も同様に観察できると期待される。 このようにX線を用いれば、四塩化チタンの還元反応を観察できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初予定していたX線による塩化チタンの還元反応のその場観察だけでなく、可視光を用いた反応観察も実施した。これにより、次年度以降に予定していた高い腐食性を有する四塩化チタンの取り扱い方法、および安全性を考慮した実験環境のセットアップ方法に習熟することができた。そこで、実際に可視光による観察実験を行ったところ、四塩化チタンのマグネシウム還元の反応の激しさや、その反応速度に関する貴重な情報を得ることができた。 X線を用いた反応のその場観察では、X線装置(マイクロフォーカスX線透視装置)に設置するための専用の電気炉や反応管、四塩化チタンの供給ラインの作製を行った。そして、作製した装置を用いて、室温で凝固した塩中においてチタンやモリブデンといった種々の金属がX線透視装置を用いてどのように見えるかを確認することができた。また、作製した一連の装置が使用できることを確認するとともに、X線を用いた手法によって四塩化チタンの還元反応を観察できることが示唆された。 このように、実験計画にわずかな変更があったものの、当初の目標であった装置の作製と次年度以降に予定していた実験手法の習得を達成した。さらに、反応速度に関する基礎的な知見も得ることができ、本研究課題は順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように、可視光による反応観察は難しいため、今後はX線を用いた手法によって四塩化チタンの還元反応を観察する予定である。ただし、現時点では実験から得られる映像の解析、および適切な観察条件について十分な調査が行えていない。そのため、まずはマグネシウムやチタン、塩化マグネシウム等の反応物や生成物を同じ容器内に充填して、これらの化学種をはっきりと区別することのできる観察条件を明らかにする。そして、実際に四塩化チタンの還元反応を800-900℃程度の高い温度で観察し、優先的な反応部位やその周囲の化学種を特定する。これにより、過去に報告されている種々の反応メカニズムの妥当性を検証するとともに、新たな反応経路の可能性を考察する。 実際のプロセスでは反応容器内にマグネシウムと四塩化チタン以外にも副生成物である塩化マグネシウムが存在している。四塩化チタンの還元反応時にはこのような塩化マグネシウムがある種の反応媒体として機能すると予想される。そこで、本研究では塩化マグネシウムに加え、ビスマス、鉛といった新たな溶媒金属を反応媒体として反応容器内にあらかじめ充填しておき、反応媒体が系内に存在する際の四塩化チタンの還元反応を観察する。これにより、種々の条件化における四塩化チタンの還元反応の挙動を明らかにし、実際のプロセス内で起きている複雑な反応を解明する。さらに、上記の反応媒体の有無や種々の反応メカニズムを利用することで、四塩化チタンの還元反応の反応部位(チタンの析出部位)の制御を試みる。
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Research Products
(3 results)