2014 Fiscal Year Annual Research Report
移動をめぐる国家化と脱国家化の相克ーコンタクト・ゾーンにおける脱領域的文化の形成
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14J01975
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
安里 陽子 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 沖縄 / 台湾 / フィリピン / シンガポール / コンタクト・ゾーン / 移動 / 米軍占領期 / 沖縄戦後史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度においては下記のように研究を実施し、学会報告と論文投稿のかたちで成果を発表した。まず沖縄にかんする課題については、おもな問いとして米軍占領期の沖縄・石垣島でパイン産業に従事していた労働者はどのような人々であったかということと、パインブームが登場することになった背景について、それぞれ沖縄県立図書館、琉球大学図書館、石垣市立図書館などにおいて文献資料調査をおこなった。また台湾移民の子孫にかんしては、石垣島にて琉球華僑総会八重山支部のメンバーなどへの聞き取り調査も実施した。これらの調査により、パインブームの登場については日、米両政府、琉球政府による経済政策のみならず、アメリカの通貨政策自体も深く関係していたほか、苗の輸入や技術導入をめぐって海外在住の沖縄出身者によるネットワークも活用されていたことが明らかになった。またパインブーム時の労働力については、地元石垣島在住の人々のほか「中琉文化経済協会」という民間団体による技術者・労働者派遣事業の一環として台湾からの労働力が導入されていたことが明らかになった。 フィリピンにかんする課題については、華人系の団体である菲律濱華裔青年聯合會の設立や活動の意義などについて、菲華歴史博物館内にある図書館やフィリピン大学中央図書館などで文献資料の収集をおこなった。 シンガポールにかんする課題については、プラナカン概念とフィリピンにおけるメスティソ概念のかかわり、またプラナカン協会のネットワークについてシンガポール・プラナカン協会会長および会員への聞き取り調査も実施したほか、シンガポール国立図書館などで文献資料を収集した。 フィリピンおよびシンガポールの調査から、「プラナカン」あるいは「メスティソ」と名称は異なるものの、ネットワークが存在し、情報を共有していることなどが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度におこなった調査および研究の達成度については、下記の通りである。まず沖縄にかんする課題については、調査研究をもとに米軍占領期沖縄・石垣島におけるパインブーム時の労働移動を軸にした沖縄戦後史を記述する試みをおこなった。この研究成果の一部を、学会報告および投稿論文の執筆、そして掲載と、形にすることができた。また、調査をしていくなかで新たな問いも生まれ、次なる課題へのつながりも見出すことができた。 フィリピンにかんする課題については、菲律濱華裔青年聯合會が発行するニュースレターのバックナンバーや同会発行のフィリピン華人にかんする文献などを収集することができ、それらも含めた文献資料調査から、シンガポールのプラナカンとのネットワークの存在、東南アジアを中心としたネットワークが存在し、情報交換やシンポジウムを開くなどの活動を活発に展開していることが明らかになった。また、フィリピン大学の研究者からフィリピン華人にかんする研究の動向やアドバイスをいただく機会にも恵まれた。 シンガポールにかんする課題については、シンガポール・プラナカン協会と東南アジア華人系墓地のなかでも随一の規模の墓地である「ブキット・ブラウン」保存運動のかかわりにまつわる情報など、同協会ニュースレターバックナンバーから入手することができた。また同協会への問い合わせや訪問者がフィリピンをはじめ東南アジアを中心に各地で増えているという情報を聞き取りから得、フィリピンとシンガポールをつなげて考察することの必要性をあらためて実感することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的を達成するため、2015年度は次のように研究を進めていく。まず沖縄にかんする課題については、パインブーム時における労働者の移動にかんする統計資料を中心に文献資料の収集を進めていくほか、台湾移民およびパインブーム時に工場での労働に携わっていた人への聞き取りもおこなう。また、台湾において米軍占領期の沖縄への労働移動にかんする統計資料などを中央研究院などで検索、収集する作業にも取り組む。パインブーム時の工場労働および台湾から沖縄への労働移動にかんする統計資料などをもとに、学会報告および論文を執筆して学術雑誌に投稿する。 フィリピンにかんする課題については、メスティソ概念の歴史的な変遷にかんする文献資料を、菲律濱華裔青年聯合會運営の歴史博物館内にある図書館およびフィリピン大学中央図書館で収集する。 シンガポールにかんする課題については、シンガポール・プラナカン協会とフィリピンの菲律濱華裔青年聯合會、およびマレーシアやインドネシアなど東南アジアにおけるプラナカンあるいは華人系団体とのネットワークについて、シンガポール国立図書館およびシンガポール大学中央図書館などで文献資料を収集する。 また、理論的な分析枠組みにかんする文献資料の収集と精読、分析も随時並行して進め、ゼミや研究会などの場をつかって研究成果をとりまとめた報告を随時おこなうように努める。そうすることにより、指導教員を含め院生、研究員などと議論し、アドバイス等を得ながら、研究内容および方向性を常に確認し進めていく。
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Research Products
(6 results)