2014 Fiscal Year Annual Research Report
キタオットセイにおけるCarry-over効果の検証と個体群動態ヘの波及
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14J01998
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
堀本 高矩 北海道大学, 水産科学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | キタオットセイ / 摂餌生態 / 生体トレーサー / 非繁殖期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,混獲・漂着,あるいは採捕されたキタオットセイの生物学的情報の収集,ならびに食性解析をおこない,本種ロシア繁殖群の非繁殖期の分布と摂餌生態を調べた.加えて,生活史を通した本種の経験環境の推定を目的として,ヒゲの安定同位体・微量元素組成を異なる海域で採集された標本間で比較することで,本種の主要な利用海域の判別指標の作成した. 2005年12月~2014年8月に北海道を中心とする北日本沿岸で混獲・漂着,採捕されたキタオットセイを収集した.収集した標本については,外部計測,犬歯を用いた年齢査定,性成熟状態の判定を行った.調査期間中に,太平洋側で48個体,日本海側で22個体の混獲・漂着個体が収集され,日本海側では採捕個体58個体も収集された.太平洋側の標本は未成熟オスの割合が多く,成熟オスの割合は低かった.一方,日本海側の標本は亜成熟~成熟オスが大部分を占めていた.本調査により,キタオットセイの来遊状況は海域によって大きく異なることが明らかとなった. 上記個体の胃内容物分析,肝臓の安定同位体比分析を行った.調査海域全体で16科22種の餌生物が確認された.日本海側の標本からはスケトウダラが多数出現した.またヤリイカやホッケといった沿岸性種も出現した.一方,太平洋側の収集された標本からはスルメイカが多数出現し,ハダカイワシ類や,ドスイカといった中深層に生息している生物も出現した. 上記の非繁殖期に採集した標本にくわえて,本種の繁殖地であるチュレニー島で繁殖個体からヒゲを採集した.直近に形成されたヒゲの根元の部分の安定同位体,微量元素組成を測定し,太平洋,日本海,繁殖地の3海域の判別分析を行い,交差検証法により判別精度を算出した.ヒゲの窒素・炭素安定同位体比,Zn,As,Cdの濃度をもとに判別指標を作成した結果,85.7%の精度で太平洋,日本海,繁殖地の3海域を判別できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では,キタオットセイロシア繁殖群の非繁殖期の摂餌生態の解明と繁殖地とのつながりを明らかにすることを主な目的としている.平成26年度までに,本種ロシア繁殖群の生活史を網羅した標本採集を行い,非繁殖期の食性解析と標本採集海域の判別指標の作成に成功した.この判別指標は,本種の海域利用履歴を推定するうえで,不可欠なものである.平成26年度の研究成果により,非繁殖期に経験した環境の違いがその後の繁殖生態に与える影響を検討するうえで重要な知見が得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
・胃内容物から出現した餌の体サイズ復元による摂餌量の推定を行う. ・キタオットセイの繁殖期である6~8月に,チュレニー島において繁殖行動の観察を行う.また繁殖個体から体組織の採集を行い,栄養状態のモニタリングと直近に利用した摂餌海域の特定を行う.作成した海域判別指標を用いて,繁殖島で採集した個体の利用海域推定を行う. ・キタオットセイの1年を通した摂餌生態と,非繁殖期の生態が繁殖生態に与える影響について論文にまとめる.
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Research Products
(5 results)