2014 Fiscal Year Annual Research Report
父系・母系遺伝子と古代DNAを用いたヒグマの大陸移動と北海道への渡来史の解明
Project/Area Number |
14J02026
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平田 大祐 北海道大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ヒグマ / 分子系統地理 / 集団遺伝学 / 遺伝的多様性 / 古代DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヒグマの大陸移動と北海道への渡来史を解明することである。ヒグマは、西ヨーロッパから北アメリカにかけて北半球に広く分布し、北海道および南千島にも生息する。これまでに北海道のヒグマ集団は異所的に分布する 3 系統 (道央、道東、道南) からなることが母系遺伝するミトコンドリア DNAの分析から明らかになっている。ヒグマのオスは出生地から遠くに移動するのに対し、メスは出生地にとどまる傾向があり、雌雄間に行動様式の違いがみられる。この雌雄間の行動様式の違いがヒグマ集団の進化史に大きく影響してきたと考えられる。また、現在の各地域のヒグマ集団の形成過程には、過去の集団の分散や分断だけではなく、地域集団の絶滅が大きく関与しているため、古代 DNA 分析による過去のヒグマの集団遺伝構造の直接的な分析が有効である。 そこで本研究では、 1. オスの行動様式を反映したヒグマの遺伝的構造を調べるために、北海道、サハリン、大陸ロシア、チベット等の現生ヒグマについて、父系遺伝子マーカーであるY染色体DNAの塩基配列解析およびマイクロサテライト解析を行った。これら多型データからヒグマY染色体DNAの遺伝子型を決定することができた。 2. ヒグマの過去の集団動態を明らかにするために、両性遺伝する核DNAの複数遺伝子座を分析した。北海道、サハリン、大陸ロシア、チベット等の現生ヒグマについて、核DNAの14遺伝子座の塩基配列を決定することができた。 3. ヒグマの古代DNA分析のためのヒグマ化石標本に関する調査・収集をブルガリア国立自然史博物館、ブルガリア・トラキア大学農学部にて行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
父系遺伝子マーカーであるY染色体DNAの塩基配列解析およびマイクロサテライト解析のデータを収集できた。また、当初の研究計画に加えて核DNA複数遺伝子座の分析を行い、塩基配列データを収集できた。さらに、次年度以降のヒグマ古代DNA分析のための標本を調査・収集することができた。以上の研究進捗状況から上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られたデータをもとに、北海道およびユーラシア大陸のヒグマ集団のY染色体DNA多型データに基づく父系における集団遺伝学的解析を行う。北海道およびユーラシア大陸のヒグマ集団の核DNAの複数遺伝子座を用いた集団遺伝学的解析を進め、ヒグマの過去の集団動態を解明する。本年度に収集したヒグマ化石標本の古代DNA分析に着手する。
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Research Products
(2 results)