2015 Fiscal Year Annual Research Report
新規不妊カースト"ユニック"-存在検証と系統における保存性-
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14J02030
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮國 泰史 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 生殖システム / 単為生殖 / 行動生態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では〈コウシュンシロアリの雄ネオテニックは新規の不妊カーストである〉という作業仮説を中心として,コウシュンシロアリの繁殖および社会システムを解明することを目的としている. 本研究の中心課題である雄ネオテニックの不妊仮説を検証するため,雄ネオテニックと雌翅アリのペアと雄翅アリと雌翅アリペアでコロニーの創設実験を前年度より継続して行った.これらのペアの産卵傾向及び卵・幼虫の遺伝解析を用いて両雄生殖虫の繁殖能力の比較を行った.その結果,雄ネオテニックの繁殖能力は翅アリ型生殖虫の繁殖能力に及ばないものの存在することが確認された. 日本学術振興会特別研究員PDである小林和也博士(京都大学大学院農学研究科昆虫生態学研究室)との共同研究として前年度より継続していたコウシュンシロアリの単為生殖能力の調査と解析では,本種の単為生殖能力が確認され,通常の偶発的単為生殖と比較して非常に高い孵化率を示すことが明らかになった.この結果は本種が今後,単為生殖の進化的道筋を検討する上で重要な材料生物となる可能性を秘めている.これらの結果の一部については現在論文を投稿中(Kobayashi, K and Miyaguni, Y. Scientific Reportsへ投稿中)である. 京都大学農学部昆虫生態学研究室助教である土畑重人博士とともにコウシュンシロアリの生殖虫置換パターンについて調査を行った.その結果,本種の生殖虫置換パターンは既知である社会性膜翅目のパターンと異なることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中心課題である雄ネオテニックの不妊仮説については,飼育実験および遺伝解析の結果より否定された.しかし,従来の研究に不足していた雄の生殖虫の繁殖能力についての知見が得られるなど,シロアリの繁殖システムの理解につながる成果が得れた.さらに本課題の遂行過程では先行研究では存在が確認できていなかったコウシュンシロアリの単為生殖能力が証明され,本種が単為生殖の材料生物としての有用性を秘めていることを明らかにするなど,当初の研究課題を超えて大きく研究が進展している.また,本種の生殖虫の置換パターンが社会性膜翅目の結果と異なることを明らかにするなど,シロアリの社会システムの新たな理解につながる成果が得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
中心課題である雄ネオテニックの不妊仮説と系統における保存性の検証については終了するが,コウシュンシロアリの繁殖および社会システムを解明するという研究の方向性は継続し,特に本研究過程で得られたコウシュンシロアリの単為生殖および生殖虫置換については共同研究者とともに調査を進めるとともにインパクトの高いジャーナルへの投稿作業を進める.
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Research Products
(2 results)