2014 Fiscal Year Annual Research Report
スーフィズム・タリーカの現代的変容とネットワーク-スーダンとエジプトの比較研究-
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14J02047
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
丸山 大介 上智大学, 総合グローバル学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | スーフィズム / タリーカ / イスラーム / スーダン / エジプト |
Outline of Annual Research Achievements |
1) スーフィズムの規範性と共同性をめぐる比較研究 東長靖氏(京都大学)が提唱したスーフィズムの三極構造を下敷きに、対象範囲が広すぎる民間信仰の極の代わりに共同性という極の重要性を説いた。この共同性にかんして、カーディリー教団とルカイニー教団の2教団を比較しながらその特徴を明らかにしようと試みた。2012年以降に顕在化したスーフィーとサラフィーの衝突以降の現地調査で得られたデータをもとに、両タリーカとも、本来重んずるべき、外部に開かれた包括的な倫理観ではなく、自らのタリーカ内部のみでの連帯を強調する排他的な論理を主張してしまうという矛盾した状況を共有していた点を明らかにした。
2) スーダンとエジプトにおける臨地調査 スーダンでは、ハルツーム大学図書館およびスーダン図書館においてスーダンのスーフィズム・タリーカに関する文献・資料収集を行ったほか、オムドゥルマンに点在するタリーカ(とりわけ、カーディリー教団とサンマーニー教団)の修道場でタリーカの活動に関する聞き取り調査を行った。また、12月下旬に行われた預言者生誕祭では、生誕祭の参加者に対してインタビューを行った。聞き取り調査では、おもに各教団の思想的特徴、新規メンバーの勧誘方法、教団規則の浸透度と教団員のタリーカへの帰属意識について調査を進めた。 エジプトでは、スーフィー高等評議会においてエジプトのスーフィズム・タリーカの現状に関する聞き取りを行ったほか、同評議会発行の雑誌『タサウウフ・イスラーミー』を過去5年分収集した。また、アズミー教団の修道場でタリーカの活動に関する聞き取り調査を行ったほか、同教団主催のスーフィー教団世界連盟の会議に参加し、タリーカが有する国内外のネットワークにかんして具体的な調査を進めうる機会を得ただけでなく、エジプトのタリーカ関係者との間に新たな人脈を築くことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査に関して当初予定していた期間よりも短縮して行ったものの、それ以外は予定通りの研究を行った。とりわけ、本研究課題から調査対象に加えたエジプトについて、研究課題のタリーカ・ネットワークについて詳細な分析を進める機会を得ただけでなく、エジプトのタリーカ関係者との間に新たな人脈を築くことができ、今後研究を進めていく上で良いスタートが切れた。また、上述の研究に基づいた1本の英語論文投稿と2件の研究発表を行っており、現在まで研究と成果発表は概ね順調に進んだと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
エジプトとスーダン両国に広がる支教団は、教団内での序列や出版物の流通、人的交流などに関して、教団本部に従属している。その一方で、各地の支教団はそれぞれ独立した、自律的な活動を行ってもいる。今回調査を行ったアズミー教団は、本部のあるエジプトではスーフィー教団世界連盟を発足させるなど、渉外活動を活発化させている一方、スーダン支部では目立った渉外活動を行っていないように見受けられた。次年度は、アズミー教団をはじめとした、両国にまたがるタリーカの思想や活動実践の比較検討、同一教団内のネットワーク分析を通じて、教団全体の活動指針と各地における個別具体的な実践内容の共通点と差異の解明を進めたい。
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Research Products
(3 results)