2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J02153
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
別府 薫 東北大学, 医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | グリア細胞 / 光遺伝学 / 虚血 / てんかん |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、光遺伝学を用いてグリア細胞の活動を操作することにより、脳病態時におけるグリア細胞の関与を明らかにする。これまでの自身の研究において、脳内アストロサイト‐神経細胞間にグルタミン酸を介した信号伝達が存在することを明らかにした(Sasaki, Beppu et al., 2012)。このようなグリア細胞-神経細胞間の信号伝達は病態時にこそ過剰にはたらくのではないかと予想し、本研究課題において、虚血という病態時におけるグリア-神経信号の破綻が、神経細胞死の発端になっていることを明らかにした(Beppu et al., 2014)。次に、虚血といった病態時ではなく正常な神経伝達においても、グリア細胞からのグルタミン酸信号が神経の活動状態を左右しているのかを調べた。その結果、神経細胞間のシナプス応答の一部に、グリア細胞からのグルタミン酸信号が含まれていることを発見した(論文投稿中)。当初の計画では、胎児期における虚血時脳傷害が、成熟期の虚血と同様のメカニズムで起きているのかを調べる予定であったが、本研究代表者は、虚血だけにとどまらず様々な脳病態における、グリア信号の関与を明らかにしていきたいと考えるようになった。そこで、虚血ほど極端な状況ではないが、神経細胞が過剰に興奮状態になるてんかん発作に着目した。脳スライス標本を用いた実験において、光遺伝学などによるグリア細胞の活動操作が、神経細胞のてんかん様発火を抑制できることが示唆された。本研究を通して、光遺伝学を用いてグリア細胞の活動を制御することにより、虚血やてんかんといった脳病態時におけるグリア細胞の関与が明らかになりつつある。グリア細胞の活動操作による脳病態の改善に向けて、どのような手法でグリア細胞の活動を制御すれば、実際の臨床応用につなげられるのかをさらに追究していきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では採用1年度目において、グリア細胞から神経細胞への興奮性の信号伝達が、虚血時の神経興奮毒性を引き起こす原因であることを明らかにした。採用1年度目から2年度目にかけては、虚血といった病態時だけでなく、正常な神経伝達が行われる過程においても、グリア細胞からのグルタミン酸信号がシナプス伝達を増幅させていることを明らかにした。また、虚血にとどまらず、てんかんという病態においても、神経細胞の過剰な発火が、グリア細胞の活動操作によって抑制できるのかを調べており、このてんかん発作抑制メカニズムを現在明らかにしている。当初は、虚血だけに着目して研究を行う予定であったが、虚血、てんかん、生理的条件下におけるグリア機能を調べるまでに発展できたことから、本研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
採用2年度目において、グリア細胞の活動を操作することによりてんかん発作を抑えられる可能性が示された。採用3年度目においては、このメカニズムを明らかにするほか、生きた動物を用いたてんかんモデルにおいてもグリア活動操作の効果が見られるのかを明らかにする。 本研究において、虚血時にアストロサイトから放出されるグルタミン酸が神経細胞死を引き起こす原因であることを明らかにした。このグルタミン酸放出は、細胞内の酸性化に依存して陰イオンチャネルが開くことによって起こることも明らかになっている。そこで、様々な陰イオンチャネルの阻害剤を用いることにより、どの陰イオンチャネルを介してグルタミン酸放出が起きているのか、分子を特定することにより、グリア細胞をターゲットにした新規の治療法の創出につなげたいと考えている。
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Research Products
(4 results)