2014 Fiscal Year Annual Research Report
微結晶粉末での単結晶X線構造解析を可能にする新規解析手法の開発
Project/Area Number |
14J02156
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坪井 千明 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 磁場配向 / 擬単結晶 / X線回折 / 単結晶構造解析 / 放射光 / 粉末結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
当グループでは,所定サイズの単結晶が得られず結晶構造解析が進んでいない物質の解析を可能にするため,磁場配向技術を用いて微結晶粉末から単結晶X線構造解析を可能にする擬単結晶法の研究を行ってきた.擬単結晶法では磁場により三次元的に配向した微結晶をUV硬化樹脂で固定するため,①試料の回収が不可能 ②樹脂硬化に伴う配向の乱れ,という欠点があった.この克服のため、本研究では三次元配向した微結晶の懸濁液を固めずにX線回折測定に供する手法を提案している(in-situ擬単結晶法).平成26年度には次の課題A、Bを遂行した。 A in-situ擬単結晶法による結晶構造解析精度検討,手法確立 B タンパク質結晶構造解析に向けた、放射光X線を用いたin-situ擬単結晶法の検討 その結果、平成25年度末までにおいて、下記の成果が得られた。 課題A:室内X線回折計中に1.対面磁石と試料駆動部からなる回転磁場印加装置と、2.スリットの入った金属円盤と駆動部からなる回転式X線チョッパーの2つの装置を導入し、この系を用いてモデル物質であるL-アラニンの結晶構造解析に成功し、また、構造解析の精度も得られ、手法確立に至った。課題B:放射光施設SPring-8、BL38B1にて実験系を構築し、L-アラニンを用いてin-situ擬単結晶法を検討した。その結果、両者共、単結晶回折測定と同等の回折像が得られ、実験系の確立に成功した。次いで、格子定数を求めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、次の3つの少課題にて構成されている。課題A、in-situ擬単結晶法による結晶構造解析精度検討,手法確立;課題B、放射光X線を用いたin-situ擬単結晶法の検討;課題C、立体構造が未知の物質の結晶構造解析。本研究ではまず、課題Aにより、in-situ擬単結晶法を確立する必要があるが、室内X線回折計を用いたL-アラニンの結晶構造解析に成功した。得られた構造をケンブリッジデータベース上の単結晶測定による構造と比較したところ、非常によく一致した。また、結晶構造解析の妥当性の指標となるR1値、wR値もそれぞれ6.5%, 17.4%であり、十分な精度での解析が可能だと判断した。 この成果は平成26年度内にて達成予定であったin-situ擬単結晶法の確立が成されたことを示している。 一方、課題Bにおいて、大型放射光施設SPring-8 BL38B1において,実際に磁場印加装置を持込みL-アラニン微結晶懸濁液のX線回折測定を行って実験系の確立を計った.この課題は平成26年度から27年度の前半にかけて遂行する予定であった。実験において、X線検出器にはデッドタイムのないシームレスな連続回折測定が可能なCMOS検出器を用いた。この検出器により、配向維持のために回り続ける試料から動画のように高速なデータ収集が可能となり,単結晶様の回折像データセットが得られた.しかし,回折スポットがアーク状に広がっているため、ソフトウェアを用いたスポットの指数付けに難航している.平成27年6月の実験おいて課題の達成を目指す。課題Cは平成26年度から物質の選定を始め、27年度より実際に構造解析を行う予定であった。現在、粉末回折測定でしか構造が得られていない物質を中心選定を進めており、候補物質が見つかっている。 以上の状況から、本研究課題は当初の研究実施計画に概ね沿った形で順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に引き続き、当初の研究実施計画に基いて研究課題を遂行する。具体的には以下の通りである。 課題B:スポットの指数付けに難航しているが、これは下記の事情による。そもそも、磁場配向試料により得られる回折スポットの半価幅は2゚程度であり,通常の室内X線では解析に問題がない.一方、今回は高輝度X線を用いたことにより低分子であるL-アラニン結晶が非常に強い回折を生じ,同じ半価幅2゚のスポットでもベースが高くなり,スポットがアーク状になっている。したがって、ソフトウェアがアークの裾を回折点と誤認するため,指数付けの精度が落ちてしまう.この問題を解決するために,微結晶懸濁液の濃度を薄くする,X線のアテネーターを厚くするなどして適切な輝度に落とすなどの対策を講じ,今後の実験を進めていく. 課題C:単結晶の作成が難しく,単結晶解析から解かれた構造データが存在しない物質の探索を行い、いくつかの候補を見つけた.例として、クラリススロマイシン無水物結晶、無水リシン結晶などである。両者とも、水和結晶の脱水から得られるが、脱水のさいに単結晶が崩壊し粉末結晶化してしまう問題がある.現在のところ粉末X線回折測定から解かれた構造しか存在しない.クラリスロマイシン無水物結晶に関してはin-situ擬単結晶法により単結晶様回折データが得られており、現在解析を進めているところである。今後、リシンについても解析を進めていく予定である.
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Research Products
(5 results)