2014 Fiscal Year Annual Research Report
生活教育思想にもとづく学習文化の歴史的創造に関する研究
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14J02166
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
冨澤 美千子 奈良女子大学, 人間文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 野村芳兵衛 / 生活教育 / 生活綴方教育 / 長良プラン / 岐阜市立長良小学校 / ライフヒストリー / フォーク・ペダゴジー / 教育文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は、第一に、生活綴方について検討した。それについては、日本カリキュラム学会第25回大会(2014年6月28日、関西大学)にて、「野村芳兵衛の綴方教育論における『遊び』の問題」という題で、自由研究発表を行った。 次に、3年間にわたる本研究全体の理論的・方法論的枠組みとなるフォーク・ペダゴジーの概念について、基本文献のレビューに基づく理論研究を進め、本研究におけるその応用を検討するため、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校比較人間認知実験室のマイケル・コール教授の下で、2014年8月17日- 9月7日までの21日間、短期滞在研究を行った。そこでは、語り(ナラティブ)を、社会や文化の中で捉え、歴史的・文化的・質的に行う研究方法について、知見を深めた。 第三に、2014年7月22日に、野村が校長として赴任して在職した1946年から1953年に、初任から3年目までの若手教師として、野村と共に教育実践の創造に日々取り組んだ7人の元・教師たちへのインタビューを実施した。当事者のナラティブに着目した研究を行ったのは、当時の状況を克明に明らかにする、という意義をもつと同時に、野村の独自な教育理念の継承のあり方を検討する有効な手がかりにもなると考えられたからである。こうした研究成果については、関西教育学会第66回大会(2014年11月16日、滋賀大学)にて「学校における生きられた経験の継承―岐阜市立長良小学校時代の野村芳兵衛をめぐる語りの分析―」という題で自由研究発表を行った。さらに、この研究発表に基づく論文「教師の語りと教育システムの継承―岐阜市立長良小学校時代の野村芳兵衛と『部制』の実践をめぐるインタビューの分析―」が『関西教育学会年報』第39号に掲載予定である。 インタビューはさらに、長良小学校の現役教員たちを対象に、2015年3月17日に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
生活綴方については、日本カリキュラム学会第25回大会(2014年6月28日、関西大学)にて、「野村芳兵衛の綴方教育論における『遊び』の問題」という題で、自由研究発表を行うことにより、修士課程で研究不足と考えていたことを解消できた。さらに、この綴方教育について今年度も検討していきたいと考えている。また、3年間にわたる本研究全体の理論的・方法論的枠組みとなるフォーク・ペダゴジーの概念について研究すべく、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校比較人間認知実験室のマイケル・コール教授の下で、2014年8月17日- 9月7日までの21日間、短期滞在研究を行ったが、そこでは、語り(ナラティブ)を、社会や文化の中で捉え、歴史的・文化的・質的に行う研究方法について、文献だけでなく実践を通して知見を深めることができた。また、2014年7月22日に、野村が校長として赴任して在職した1946年から1953年に、初任から3年目までの若手教師として、野村と共に教育実践の創造に日々取り組んだ7人の元・教師たちへのインタビューを実施したが、当事者のナラティブに着目することにより、当時の状況をさらに明らかにし、教育理念の継承のあり方を検討する有効な手がかりにもなった。こうした研究成果については、関西教育学会第66回大会(2014年11月16日、滋賀大学)にて「学校における生きられた経験の継承―岐阜市立長良小学校時代の野村芳兵衛をめぐる語りの分析―」という題で自由研究発表を行うことができた。さらに、この研究発表に基づく論文「教師の語りと教育システムの継承―岐阜市立長良小学校時代の野村芳兵衛と『部制』の実践をめぐるインタビューの分析―」が『関西教育学会年報』第39号に掲載予定である。 インタビューはさらに、現役教員たちを対象に、2015年3月17日に行ったが、2015年度その成果を学会発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は、第1にインタビューの分析を、イギリスの教育学者であるアイヴァー・グッドソンとパット・サイクスの著書『ライフヒストリーの教育学』(グッドソン&サイクス, 2006)の手法を用いて、ライフヒストリー分析という方法で行いたい。ライフヒストリーとは、語り手と聞き手や研究者が協働で構築するものであり、個人のライフストーリーとは異なる物語りを生み出そうとするものである。ライフストーリーとは、私たちが語る人生の出来事についての物語である。教師たちのライフヒストリー分析を行うことにより、2014年度とはまた違う角度で研究できると考える。 第2に、野村芳兵衛の生活綴方指導論について、2014年度検討したことに引き続き、さらに具体的にその特徴について考察し纏めていきたい。第3に、3年間にわたる本研究全体の理論的・方法論的枠組みとなるフォーク・ペダゴジーの概念について、学習文化の概念を応用した先端的な研究を調査するため、米国カリフォルニア大学バークレー校のリーン・パーカー教授(Leann Parker)の下で、2週間の短期滞在研究を計画する。そのための研究経費として、カリフォルニア大学バークレー校での調査研究に必要となる外国旅費(交通費、宿泊費、日当)を計上した。 第4には、長良小学校における「長良プラン」の下で培われた生活教育思想と学習文化を検討するのに、岐阜市立長良小学校、岐阜県歴史資料館、関市立図書館等での史資料の収集・発掘と分析をさらに進める。また、長良小学校にある、現・旧職員の交流と結び合いの会である「みどり会」に所属する元教師たちへのインタビューなど、機会があれば積極的に行い、史資料と合わせて分析していきたい。そのため、国内出張旅費を経費計上した。 なお、以上の研究の成果については、論文にとりまとめ、学会発表を行うと共に、査読付き学会誌など学術雑誌への投稿を行う予定である。
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