2015 Fiscal Year Annual Research Report
生活教育思想にもとづく学習文化の歴史的創造に関する研究
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14J02166
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
冨澤 美千子 奈良女子大学, 人間文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 野村芳兵衛 / 生活教育 / 生活綴方教育 / 長良プラン / 岐阜市立長良小学校 / 仲間づくり / 教育文化 / 継承 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は、2014年度に行った、野村芳兵衛の長良小学校・校長在任中(1946年-1953年)、若手であった元教師たちのインタビューの分析をして、世界新教育学会、2015年度国際教育フォーラム(2014年6月、玉川大学)にて、「教師のライフヒストリーの中の教育実践―岐阜市立長良小学校時代の野村芳兵衛をめぐるインタビューの分析―」と題して、2014年度に自由研究発表した「部制」とは違う切り口で、「生活綴方」の語りを中心に自由研究発表をした。7月には、日本カリキュラム学会第26回大会(昭和女子大学)にて、引き続き「生活綴方教育」について、「生活綴方教育における野村芳兵衛の独自性」と題して、自由研究発表を行い、これらと2014年度からの「生活綴方」に関する研究をまとめて、「野村芳兵衛の綴方教育における『仲間づくり』の意義と重要性」と題して日本カリキュラム学会の『カリキュラム研究』第25号に掲載した(印刷中、2016年6月発行予定)。8月には、生活綴方について研究交流するために、兵庫県豊岡市で行われた東井義雄研究会に出席した。9月は、5日間、アメリカ合衆国カリフォルニア州にて、カリフォルニア大学バークレー校リーン・パーカー教授に案内されて、オークランドの小学校3校を視察した。また、帰国後は、名古屋にて、9月14日、第6回保育・教育実践史研究会に出席し、生活綴方教育の研究交流を行った。9月15日から20日までは、岐阜市立長良小学校合宿で参与観察。10月には、教育哲学会第58回大会(奈良女子大学)にて、「野村芳兵衛における『子ども』概念―『育ちつつある』存在として―」と題して自由研究発表を行った。『子ども』概念については、2016年度引き続き考察していく予定である。その後は、先に上げた日本カリキュラム学会の投稿論文執筆や、2016年10月発刊予定の『子どもの側に立つ教育―野村芳兵衛から長良小学校へ―』(山住勝広 監修)の第4章、第5章の執筆など、執筆を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
修士課程では研究が不十分であり、2014年度から取り組んだ、野村芳兵衛の「生活綴方教育」についての研究が、2015年度も引き続き行うことにより、さらに発展しまとめることができた。2016年6月に発行予定(印刷中)の査読付き全国学会誌『カリキュラム研究』第25号の巻頭論文として「野村芳兵衛の綴方教育における『仲間づくり』の意義と重要性」と題した論文が掲載されるが、これこそ2015年度の研究成果と言えるであろう。そしてさらに、「綴方教育」を研究する中で、野村の「仲間づくり」と表する教育の在り方が明確になり、それが綴方だけではなく、野村のすべての教育思想に深く通じていることが明らかになった。修士論文において、池袋・児童の村小学校の「ハウスシステム」の概念が、「長良プラン」のベースになっているということを論説したが、2014年7月に行った元教師たちのインタビューで語られた「部制」について、再び考察するにあたり、その「部制」という方法にも「仲間づくり」の概念がベースにあるということが見出され、野村の教育全般に及ぶ考え方であるということが明らかになった。2016年度はこの点についても論文にまとめ、その成果を自由研究発表ならびに査読付き全国学会誌への投稿で発表していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度はまず、日本カリキュラム学会第27回大会(香川大学)にて「野村芳兵衛における仲間づくりの教育―児童の村小学校での実践への意味づけの観点から―」と題して自由研究発表を行う予定である。「部制」や「生活綴方」や「長良プラン」といった、戦後の野村の教育の実践として押さえるべきカテゴリーのまとめと共に、戦後になって野村自身が、児童の村小学校や長良小学校の自分の実践を説明する時使うようになった「仲間づくり」と池袋・児童の村小学校時代使っていた「協働自治」という言葉が、野村にとってどのような違いがあるのか考察したい。次に、長良小学校において、教育思想による教育文化の継承がなされていることを明らかにしたい。教育方法の継承は、目的や意味の形骸化を招き、思想の継承と意味の追究によって、野村の教育思想が引き継がれてきたと考える。そのことを示すことにより、学習文化の歴史的創造について明らかにしたい。
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