2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J02203
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鏡山 智子 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 法隆寺 / 斑鳩 / 法隆寺再建期 / 百済 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、7世紀後半の斑鳩造像にみられる地域性と国際性に着目することで、従来必ずしも十分な研究がなされていない彫刻作例の年代を相対化し、造像背景に迫ることを目的とする。 平成26年度には、学会誌『美術史』第178冊に論文「法輪寺薬師如来像・伝虚空蔵菩薩像をめぐって」を投稿した(平成27年3月刊行)。同論文では、法輪寺の両像について、法隆寺の金堂釈迦像・百済観音像の造形要素の継承、及び百済様式受容の二面から考察し、両像の造立を7世紀後半の法輪寺の環境に位置づけた。そして両像が、天智朝末頃から天武朝末頃までの時期に、斑鳩地域の伝統的な工房で造られたと推定した。また、法隆寺像が法輪寺像の造形規範となったことを指摘したことで、その伝来が不明とされてきた百済観音像が、7世紀後半当時、法隆寺あるいはその周辺に存在していたことを間接的に示すことにも繋がった。 また、近年南朝や百済の彫刻作例との関わりが見出され、飛鳥彫刻への影響も指摘される山東省出土の石仏群、及び河北・河南の石窟を実地に見学し、中国・北斉~初唐の彫刻に関する知見を深めた。斑鳩に伝来した作例に関しては、受入研究者の科学研究費助成事業「5~9世紀東アジアの金銅仏に関する日韓共同研究」の一環で実施された調査において、法隆寺献納宝物中の金銅仏8躯(東京国立博物館所蔵)を調査する機会を得、熟覧・写真資料の収集を行った。これらの調査で得られた知見をもとに、斑鳩造像の地域性と国際性という二つの視点から検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、7世紀後半の斑鳩造像にみられる地域性と国際性に着目することで、斑鳩に伝来する各作例の年代を相対化し、その造像環境や背景に考察を加えることを目的とする。平成26年度には、法輪寺の薬師如来像と伝虚空蔵菩薩像に関する論文を学会誌『美術史』に投稿し、従来その位置づけが必ずしも明確ではなかった両像に関して、法隆寺の釈迦如来像と百済観音像からの造形要素の継承、及び百済様式の受容と言う二面から7世紀後半の法輪寺の環境に位置づけた。また、国内外に所在する関連作例の調査も行うことができたので、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
斑鳩造像のもつ独自性を相対化するため、斑鳩地域以外に伝存する作例の位置づけも進めている。現在は興福寺東金堂の脇侍菩薩像に注目しており、これに関連して平成26年度には、中国・陝西省西安碑林博物館、慈善寺石窟、彬県大仏寺、敦煌莫高窟を踏査し、隋~初唐の造像様式に関する知見を深め、写真資料の収集を行った。特に敦煌莫高窟では、従来あまり研究がない初唐期の塑像について、その保存状態を実際に確認することができた。今後はこれらの現地調査で得られた知見や資料をもとに、飛鳥後期から奈良前期までの彫刻作例の位置づけを行いながら、同時代彫刻史における斑鳩造像のあり方、飛鳥や近江地域との対比についても検討を進める。
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Research Products
(1 results)