2015 Fiscal Year Annual Research Report
SIRT3欠損マウスを使用したROSによる卵巣機能低下の機構の解明と救済
Project/Area Number |
14J02249
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
磯野 渉 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | 卵巣ストレスの緩和 / 生殖能力の急激な低下 / 経口避妊薬の継続投与 / 卵胞貯蔵量の低下 / 酸化ストレスマーカー / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスの加齢による生殖能力の低下と経口避妊薬による排卵抑制での緩和効果を検討しているが、前年度までで、マウスの月齢ごとの採卵数、卵巣内の卵胞数をグラフ化し、10ヶ月齢から12ヶ月齢にかけて急激に生殖能力が低下し、14ヶ月齢でほぼ排卵しなくなることがわかったが、2ヶ月齢から経口避妊薬を継続投与したマウスは12ヶ月齢でおよそ2倍の排卵数であった(8.7±4.8 v.s. 5.5±3.9)一方で、10ヶ月齢では投与群での差はなかったため、経口避妊薬の投与は10~12ヶ月が重要であると考え、10ヶ月齢から2ヶ月投与した群で採卵をし、有意に多かった(9.5±3.5)。このことから、生殖能力が急激に低下し始めるタイミングからの作用が重要である可能性が示唆された。また、卵巣連続切片の卵胞数をカウントすることで、貯蔵卵胞を月齢ごと、投与群ごとに比較したが、経口避妊薬に月齢による減少を軽減させる効果はみられなかった。 一方で、卵巣の排卵周期を介した加齢によるストレスの蓄積指標として、卵巣内のγH2Ax量をウェスタンブロットで定量していることに加え、脂肪組織の酸化ストレスマーカーであるMalondialdehyde、4 Hydroxynonenalで卵巣組織切片を免疫染色することで、卵巣のストレスを視覚化することに成功した。この評価基準を使用することで、12ヶ月齢において、経口避妊薬継続投与によって、卵巣のストレスは有意に軽減していることが示唆された。以上から、卵胞数の保存でなく、卵巣ストレスの緩和という経路でもって、生殖能力が有意に保存されていると結論された。 また、上記のマーカーで主に検出される部位に、陳旧性の白体があるが、同時にマクロファージ特異的マーカーF4/80でも染色されるため、マクロファージを介した炎症反応が関わっていることも推測された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスにおける加齢性の生殖能力の低下を年齢ごとに採卵数を使用してグラフ化し、10ヶ月齢から急落することを確認した。それによってヒトにおける35歳以降に該当する状況であると対応できた。その結果を参考にして、経口避妊薬の最適投与期間が10ヶ月齢からの2ヶ月であることを示した。ヒトに適応することを考慮した場合、期間が長いとコンプライアンスと費用の問題があるため、短縮することが望ましいためである。 卵巣切片、タンパク質による評価では、卵胞貯蔵に対しては、経口避妊薬による排卵抑制は効果が小さいことがわかったが、酸化ストレスマーカーを使用することで、組織障害に対しては有意な効果があることが言えた。このことは、排卵抑制を行うことで、卵胞数の維持はできないものの、組織障害緩和の経路で効果があるという結果を示すと同時に、酸化ストレスマーカーによる卵巣組織の免疫染色によって、ストレス量を視覚化したことで、今後の介入の評価を行うことが出来る可能性がでた。
|
Strategy for Future Research Activity |
現時点では経口避妊薬投与によって有意に排卵数が増加する12ヶ月齢においてのみ、酸化ストレスを評価しているが、月齢ごとの変化を評価し、卵胞数の変化と合わせて、加齢による生殖能力の低下を詳細に検討する。特に卵胞数は比較的一定の速度で低下することがわかっているので、急激に低下する減少に酸化ストレスが大きくかかわっていることが予測されるためである。 また、酸化ストレスマーカーが強染される卵巣内の陳旧性白体に同時にマクロファージも検出されるため、特に有意差のでる12ヶ月齢の卵巣をマイクロアレイなどの方法で網羅的に解析し、関連性の高い経路を検討する。可能であれば、その機能を低下させた状態や、活性化させる介入方法を検討することで、卵巣のストレス対応機構を分析する。
|
Research Products
(1 results)