2015 Fiscal Year Annual Research Report
北部ビルマにおけるジンポー語危機方言の調査とドキュメンテーション
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14J02254
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
倉部 慶太 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ジンポー語 / カチン語 / ウマ方言 / パッチャイ方言 / シナ・チベット語族 / チベット・ビルマ語派 / 記述言語学 / 比較言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は当初の計画通り複数のジンポー語方言を対象として現地調査に基づく共時的記述研究とそれに基づく通時的研究を行った。北部ビルマにおいて2度の調査を実施し、成果としてジンポー語方言に関する論文2本と発表5つを公表した。
(1) 海外現地調査 2015年4月と2016年1月から2月にかけて北部ビルマのカチン州に赴き、複数のジンポー語方言を対象に言語調査を行った。カチン州中部に分布するウマ方言とパッチャイ方言の調査に着手した。これらは先行研究が皆無の言語で話者数も少ないため、その調査と記録が急務である。現地調査ではそれぞれの言語の基礎語彙を約一千語収集・録音し、音声の書き起こしを行うとともに音素分析を行った。その結果、これらの言語に共通方言が失った祖語の半母音がよく保存されていることなどを確認した。また、前年度からのガウリ方言の民話資料の収集を継続した。
(2) 研究発表 本年度は、タイ、米国、オランダで行われた国際会議および国内研究会にてジンポー語とその方言に関する5つの発表を行った。発表では、共通方言が失った祖語の末子音、ジンポー語のシャン語借用語、カチン諸語のvernacularismなどを扱ったが、いずれも研究蓄積が乏しいか皆無の研究である。特に、共通語が失った末子音はジンポー語史において重要であるが、本研究が対象とする方言からの証拠が祖語再構に大きな役割を果たす。また、本年度中にガウリ方言の歴史音韻論に関する論文とジンポー語の民話資料を公刊した。本研究によりガウリ方言が祖語の半母音や末子音の一部を保存する重要な言語であることを示した。また、本年度はこれまでの研究成果をまとめたA Grammar of Jinghpaw, from Northern Burma と題する668 頁の共時的記述文法を執筆し、同論文により2016年3月に京都大学から博士の学位を与えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も前年度に引き続き実際に北部ビルマに赴き、研究蓄積の乏しい複数のジンポー語方言を対象としたフィールドワークに基づく調査研究を行った。その結果、これまで先行研究が皆無であったウマ方言とパッチャイ方言の基礎語彙各一千語を収集し分析することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の計画通り、北部ビルマにおいて研究蓄積の乏しいジンポー語方言を対象に現地調査に基づく調査研究を行う。特にこれまで研究が皆無であるツァセン方言とティンナイ方言を主要な対象として各一千語規模の語彙を収集し、得られた一次データに基づきながら音韻分析を行う。併せて、研究蓄積の乏しい方言のテキスト資料を収集し、得られた資料に基づいて文法分析を施す。
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Research Products
(8 results)