2014 Fiscal Year Annual Research Report
薬用樹木および植物成分の細胞外メラニン生成阻害機構の解明と応用研究
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14J02303
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
山内 恒生 岐阜大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | メラニン / Ugonin / 薬用植物 / quercetin |
Outline of Annual Research Achievements |
熱帯産薬用植物のスクリーニングを行い, Helminthostachys zeylanica根50%エタノール抽出物にメラニン生産制御効果を確認した。その抽出物からUgonin J, K, Lと2つの新規quercetin配糖体を単離した。これらを試料としたマウスB16メラノーマ細胞試験により,ugonin J, Kが細胞外メラニン生成阻害活性を示し,quercetin配糖体は細胞内メラニン生成促進活性を示した。これらの結果からフラボノイド類にメラニン生成を制御する作用を確認したため,構造活性相関の調査と活性機構の解明を行うこととした。 これまでにugonin J, KのB環とC環の構造が活性に与える影響について調べるために類似フラボノイドの活性試験を行った。その結果C環のフラボン骨格とB環のカテコール骨格の細胞外メラニン生成阻害活性への必要性が示された。さらに7位に結合する低極性置換基の活性への重要性を明らかにしていくため,luteorlinの7位にさまざまな置換基をもつ化合物を合成し,活性を測定した。その結果luteolin-7-O-propyletherが合成した7位置換luteorlin誘導体の中で最も活性が強く,その活性はugonin Kと同等であった。 一方quercetin配糖体がメラニン生成促進活性を示したことから構造活性相関の調査のため19種quercetin誘導体を合成し活性試験を行ったところ3-O-methylquercetin(化合物1)と3,4',7-O-trimethylquercetin(化合物2)が低細胞毒性で強力な細胞内外メラニン生成促進活性を示した。そこでこれらの活性機構の解明を試みた結果,化合物2はメラニン合成酵素の発現を促進し,一方化合物1は分解を阻害することでメラニン生成を促進することを示唆した。さらに化合物1と2はメラノソーム輸送に関連するEPI64の発現を阻害することでメラノソーム輸送を促進し,細胞外メラニン量を増加させていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでにHelminthostachys zeylanica根50%エタノール抽出物から単離同定したugonin類とquercetin配糖体の構造活性相関と活性機構の解明を行ってきた。当初はメラニン生成抑制活性を示したugoninJ,Kの構造活性相関とその活性機構の解明を目的として研究を行い,C置換基に結合する誘導体の活性への影響を調査してきた。しかし,メラニン生成を促進したquercetin配糖体の構造活性相関の調査においても,ugonin類の研究に加えて行うことができた。当初から,有機化学的な手法に加えて分子生物学的な手法を取り入れた熱帯産薬用植物成分の活性機構の解明を計画に挙げてきた。この研究計画通り,他研究室に足を運び,タンパク発現や局在を調べる分子生物学的手法を学んだ。この手法を用いてquercetin配糖体の構造活性相関の結果,活性を示した3-O-methylquercetin(化合物1)と3,4',7-O-trimethylquercetin(化合物2)の活性機構の解明を試みた。その結果,これらのメラニン合成酵素であるチロシナーゼの発現や分解に与える影響およびメラノソームの輸送に与える影響を明らかにすることができた。以上の結果から,当初のメラニン生成を抑制する薬用植物成分であるugonin類のみならず促進物質の探索とその活性機構の調査までに手を伸ばすことができたため,計画以上の成果を得たと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,メラニン生成制御活性を示したインドネシア産薬用植物である Helminthostachys zeylanica根50%エタノール抽出物から得られたugonin J,Kとquercetin配糖体の構造活性相関と活性機構の解明を行ってきた。特にquercetin誘導体の細胞外のメラニン生成促進機構については細胞内のタンパク発現や分布に与える影響を調べることで結果を得てきた。構造活性相関の調査の過程でその有用性が確認された3-O-methylquercetin(化合物1)においてはメラニン合成酵素の分解を阻害することでメラニン生成を促進したのではないかと考察した。メラニン合成酵素であるチロシナーゼはプロテアソームやリソソームにより分解されることが知られている。今後はさらなるメカニズムの解明のため,化合物1のチロシナーゼ分解阻害機構をプロテアソーム阻害剤を用いた試験を実施することで解明して行きたい。 一方ugoninJ,Kにおいて構造活性相関を明らかにしてきたが,細胞内タンパクに与える影響については未だに解明できていない。このためquercetin誘導体の活性機構の解明と同様にしてメラニン合成酵素やメラノソーム輸送に与える影響を調査していく。 これまでの研究ではマウスB16メラノーマ細胞を用いて活性試験や活性機構の解明を行ってきた。しかし,ヒトへの応用を考え,正常ヒトケラチノサイトとメラノサイトを用いて3次元皮膚モデルを作成し,これを用いてメラノーマ細胞で活性を示したquercetin誘導体やugonin類の活性を評価していきたい。
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Research Products
(9 results)