2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J02312
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小島 敬裕 京都大学, 東南アジア研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ミャンマー / 上座仏教 / 宗教政策 / 宗教実践 / 民族間関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、3回のフィールドワークを実施した。まず2014年9月には、ミャンマーのシャン州ナムサン、チャウッメー、マンダレーを中心とする地域において、パラウン族の仏教実践に関する調査を実施した。次に、2014年12月には、ミャンマーのラカイン州ミャウッウーでラカイン族の仏教実践について、またシットゥエーでは仏教徒とムスリムの関係について、さらに民族宗教護持協会の本部が置かれるヤンゴン市内のインセイン・ユワマ寺院では民族保護法に関する調査を行った。2015年3月には、ミャンマーのシャン州カロー、ニャウンシュエ、マンダレーで少数民族の仏教実践に関する調査を行った。 これらの調査により、以下のような成果が得られた。 第一に、民族宗教護持協会が国会に提出した「民族保護法」の原案を入手するとともに、その審議経過に関する情報を得たことである。現代ミャンマーの国民統合にとって、宗教間対立は重要な課題となっている。中でも民族宗教護持協会による反ムスリム活動は、国際的な注目を集めているが、その実態に関しては不明瞭な部分が多い。そこで民族護持協会による法案ならびに国会で審議中の修正案を比較するとともに、その過程での議論に関する聴き取りを行い、双方の意図を把握するための材料を入手した。 第二に、ラカイン州のシットゥエーでの調査により、こうした法制度に関する議論の一方で、宗教実践の現場における宗教間・民族間関係の一端を実地に見聞できたことである。特にラカイン州における仏教徒とムスリムの衝突の結果、政府によって隔離状態におかれたムスリム側に対しては国際機関やNGOからの援助が届いている一方で、支援を得ていない仏教徒の側は、ムスリムのみならず国際機関やNGOに対しても反発を強めている実態などを把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の一つは、特に民主化以降のミャンマーの国民統合にとって重要な課題である宗教間対立を、国家がいかに統御しようとしているのかについて明らかにすることであった。そのため具体的な文献資料の収集を目指したが、「民族保護法」の原案と政府による修正案を入手したことと、その経緯の関係者への聴き取りにより、民族護持協会の狙いのみならず、政府側の意向を明らかにするための基礎資料が得られたためである。 もう一つの研究目的は、民族間・宗教間関係の地域における実態を、フィールドワークによって明らかにすることである。これについては、ラカイン族の仏教徒や民族護持協会への調査により、仏教徒側のムスリムに対する意識を把握するための基礎的なデータを取得できたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
宗教政策について、2014年度は「民族保護法」の原案作成のプロセスに関する調査を行ったが、2015年度には、国会での審議を経て、法案は成立する見込みである。まず法案の文面を取得して分析を行うとともに、そうした文面へと修正された経緯について、関係者への聴き取りを行う。 地域における宗教間関係の実態については、まず一般仏教徒への「民族保護法」に対する見解を調査するとともに、可能であれば非仏教徒側の意見の聴き取りも行いたい。さらに仏教徒と非仏教徒の対立の現場のみならず、地域において両者が対立を回避するための実践に関する調査を、ミャンマー各地における複数の宗教・民族が交錯する地域において実施する予定である。
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Research Products
(9 results)