Outline of Annual Research Achievements |
非線形波動方程式の初期値問題の小さい初期値に対する解の爆発解析は, 1979年のフリッツ・ジョンによる結果を始めとし, 多くの研究がなされてきた. 近年, これらの結果を外部問題へ拡張する取り組みが始まってきている. 本年度は, まず, 外部問題に応用できると思われる特殊な非線形波動方程式の初期値問題の解析を行い, 以下のような新規性のある結果が得られた. まず, 空間1次元において空間変数に関する重み関数をもつ非線形波動方程式の解析を行った. 先行研究では, ある種の正値条件をみたす初期値関数に対して, 解が有限時間内に爆発することが示されていたが, 解が存在する最大時刻については最適性が不明であった. そこで本年度はまず, この最適性を明らかにすることに焦点をあて, 結果としてそれを明らかにすることに成功した. 鍵となる事実は, 初期値問題に対応する積分方程式の解の爆発を示すために用いられる逐次近似法において, 第一段階の評価が, 先行研究で得られている評価よりも良いものが得られていることであった. 特にこれは, 他の空間次元には見られない空間1次元の波動方程式の解の表示の特性に基づいていることも判明した. 更に空間1次元において, 特殊な半線形消散型波動方程式を考察した. これは, 消散波動方程式の解にある種の変換を行うと, 時間変数に関する重み関数をもつ非線形波動方程式が得られるという構造を持っている. 先行研究では, 解の最大存在時刻の評価に対して, 非線形性が劣臨界の場合のみ上からの評価が得られていた. 本年度は, 解の時間大域的存在と有限時間内爆発を分ける, 臨界の場合も込めて, 最大存在時刻の上下からの評価を得ることができた. 更に, 初期値関数がある種の対称性を仮定した場合に, 非線形性の臨界指数が変わることも示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は, 当初の目的である, 外部問題における解の爆発解析の結果 (Zhou & Han (2011) の精査を行ったと同時に, これらの結果に応用が可能と思われる特殊な非線型波動方程式に対する初期値問題の解析を行い, 新規性のある結果がいくつか得られた. このことから, 現時点においての本研究の達成度は, おおむね順調に進行していると思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は, 本研究の目的である外部初期値境界値問題の解析に焦点をおく. そのためにまず, 空間低次元において, 解の表示式を導出することが目的となる. これを達成することができれば, 前で述べていた初期値問題で用いられていた手法を適用することができると思われる. 更に, 研究目的達成のため, 国内外の国際会議や研究集会等に積極的に参加, 講演を行い, 情報収集, 意見交換を行う.
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