2014 Fiscal Year Annual Research Report
ヒュームをモデル・ケースにした自然主義的懐疑論の研究
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14J02356
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
澤田 和範 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | ヒューム / 自然主義 / 懐疑論 / 因果論 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、 デイヴィッド・ヒュームの自然主義と懐疑論との関連において、(1) 因果論に関する最近の外在主義による解釈を批判的に検討し、また、(2) ヒュームの外界懐疑論の議論を中心に研究した。(1) (2) ともに、とくに哲学的方法論としての「ヒュームの自然主義」の明確化、および、ヒュームの自然主義・懐疑論・観念説という三要素の関係を検討するという研究計画の実施である。 (1) については、 最近の自然主義的ヒューム解釈の一つとして近年注目されているところの、ヒュームの因果論を非懐疑主義的に捉える外在主義による解釈を批判する議論を展開した。そのうえで、外在主義解釈の根拠とされる論点を十分に説明するような、オルタナティブな内在主義的解釈を提出し、ヒュームの因果論が哲学的探究において果たす役割を論じた。 (2) については、 ヒュームの『人間本性論』第一巻第四部第二節の有名な外界懐疑論に焦点を合わせ、ヒュームが知覚表象説は不合理であると断じた議論は不十分であると指摘した。そのうえで、ヒューム理論哲学の体系との整合性を考慮しつつ、彼の誤謬を修正したとすれば、ヒュームの外界に関する理論は「反実在論的(懐疑的)な知覚表象説」とでも呼ぶべきものになり得たはずであると論じた。ヒューム解釈としては、彼の外界懐疑論とされてきた議論において、区別すべきいくつかの要素がしばしば混同されている、と指摘した点が重要である。さらに、通常の解釈をやや超えたヒュームの議論の書き換え作業をあえて実施したことによって、とくにヒュームの哲学探究の目的と、彼の自然主義的方法論とを、彼の外界懐疑論において交差させ、それらの重要な論点のいくつかを、従来の研究には見られなかった仕方でうまく取り出すことができたと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒュームの自然主義および懐疑論の研究の根幹にかかわる問題、ヒューム因果論の役割と位置づけの明確化と、外界懐疑論の議論の批判的再構成とを達成することができた。この成果は、博士論文の完成へと直接的につながっていくことが十分に期待できる。 ただし、本来2年目に予定していたところの、現代的観点からするヒュームの議論の批判的再構成が予想以上に進展した一方で、当初予定していた観念説の果たす理論的役割に関する歴史方面からの検討はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究によって「内在主義的な自然主義」というヒュームの方法論上の立場が明らかになった。今後は、(1) この立場のもとで、さらに一貫したヒュームの哲学探究の実像を描き出しながら、(2) 懐疑論の批判的分析と再構成を進めていく。 (1) に関しては、歴史的文脈を考慮しつつ、ヒュームの観念説という精神モデルの枠組みで彼の探究をメタ的に説明し直すことを試みる。それによって観念説の果たす理論的役割の意義(あるいは意義のなさ)が検討される予定である。(2) に関しては、ロックやバークリからの影響を批判的に分析することを足がかりに、ヒュームの議論の批判的研究を進める予定である。
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Research Products
(2 results)