2014 Fiscal Year Annual Research Report
正常上皮細胞とRas変異細胞の境界で特異的に機能するタンパク質の探索
Project/Area Number |
14J02366
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
八子 優太 北海道大学, 総合化学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞競合 / apical extrusion / EDAC / SILAC / ADAMDEC1 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の研究室ではこれまでに、培養細胞系を用いて、Ras変異細胞が正常上皮細胞に取り囲まれた際に、変異細胞が正常細胞層から押し出される “Apical Extrusion” という現象が生じることを明らかにした(Hogan et al., Nature Cell Biology, 2009)。本研究では ①安定同位体含有アミノ酸を用いたタンパク質の質量分析による定量的比較解析法(SILAC法)、および②マイクロアレイにより、タンパク質量・mRNA量の双方の観点から、正常上皮細胞と変異細胞の境界で特異的に機能するタンパク質の探索を行い、“Apical Extrusion” を引き起こす分子メカニズムの解明を目指す。 SILAC法を用いたスクリーニングにより正常上皮細胞とRas細胞の境界で特異的に増加する分泌タンパク質を複数同定することに成功した。本年度は同定したタンパク質の中でADAMDEC1に着目し研究を行った。qPCR解析により、ADAMDEC1はRas変異細胞と混合培養された正常細胞でmRNAレベルで増加することを明らかにした。さらにADAMDEC1遺伝子の転写調節領域を用いたルシフェラーゼ解析により、mRNAレベルの変化は、転写調節により生じることが示唆された。また、正常細胞内でADAMDEC1の発現抑制を行うことによりRas変異細胞のApical Extrusionが有意に減少し、この減少は培地へのADAMDEC1添加によりレスキューされた。このことからADAMDEC1が変異細胞の排除現象に関与していることが示唆された。これらの結果は「正常細胞に備わる抗腫瘍作用 (EDAC, Epithelial Defense Against Cancer)」(Kajita et al., Nature Communications, 2014)により、正常細胞がADAMDEC1を介して変異細胞を積極的に排除しようとしていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初設定した研究課題の通り、現在までにSILAC法により正常上皮細胞とRas細胞の境界で特異的に増加する分泌タンパク質を複数同定することに成功した。現在はADAMDEC1を中心に同定タンパク質がRas変異細胞の排除に関与するか、関与する場合はその作用機序について解析を進めているところである。また、mRNAレベルで変化するタンパク質に関してもマイクロアレイにより解析を進めており、研究は順調に推移していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は現在までに同定されたタンパク質を複合的に解析を進めていき、正常細胞層から変異細胞を排除する分子メカニズムの全容解明を目指す。mRNAレベルで変化するタンパク質に関してはそれらを制御する転写因子の存在を調べ、上流で働く分子メカニズムを明らかにする。分泌タンパク質に関しては変異細胞の排除の促進あるいは抑制に関わるかを明らかにし、それらが共通の分子メカニズム上で作用するか解析を進める。研究の進捗に関しては、これまでのところ順調であり、研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点はない。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] EPLIN is a crucial regulator for extrusion of RasV12-transformed cells.2015
Author(s)
Ohoka, A., Kajita, M., Ikenouchi, J., Yako, Y., Kitamoto, S., Kon, S., Ikegawa, M., Shimada, T., Ishikawa, S., and Fujita, Y.
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Journal Title
Journal of Cell Science
Volume: 128
Pages: 781-789
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Filamin acts as a key regulator in epithelial defence against transformed cells.2014
Author(s)
Kajita M., Sugimura, K., Ohoka, A., Burden, J., Suganuma, H., Ikegawa, M., Shimada, T., Kitamura, T., Shindoh, M., Ishikawa, S., Yamamoto, S., Saitoh, S., Yako, Y., Takahashi, R., Okajima, T., Kikuta, J., Maijima, Y., Ishii, M., Tada, M., and Fujita, Y.
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 5
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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