2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内ミトコンドリア輸送システムを利用した核酸送達キャリアの開発
Project/Area Number |
14J02379
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
河村 恵理子 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 薬物送達学 / ミトコンドリア / 細胞内動態 / アンチセンスRNA / ミトコンドリア病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では、変異ミトコンドリアを標的とした治療戦略を確立するため、細胞内動態を制御したミトコンドリア標的型核酸送達システムの構築、および機能性核酸の送達によるミトコンドリア機能変化を検証することを目指す。平成27年度は、下記の項目について研究を遂行した。 細胞内動態を制御した新規ミトコンドリア標的型キャリアの構築を行うため、ミトコンドリア選択的な輸送タンパク質を利用することを試みた。しかし、タンパク質精製やキャリア修飾が困難であることが問題となり、新たにミトコンドリア送達能を向上したキャリアの設計を検討している。 ミトコンドリア標的型キャリアによるミトコンドリアへの核酸送達能を評価するためには、核酸による機能を評価することが必要となる。これまでに、ミトコンドリアDNAの遺伝子を標的としたアンチセンスRNAをキャリアに内封して送達することにより、アンチセンス効果が得られることが示唆されている。今年度はキャリア構築、評価系の最適化を行ったことにより、詳細なアンチセンス効果の検証を行うことを可能とした。評価の結果、標的タンパク質発現量の抑制、呼吸鎖複合体活性の低下を定量的に示すことができた。さらに、ヒト由来のマトリクス輸送配列を付加したアンチセンスRNAにおいても同様にアンチセンス効果が得られることを確認した。 ミトコンドリアDNAの変異・欠損は、ミトコンドリアの機能低下を引き起こし、ミトコンドリア病を誘発する。ミトコンドリア病患者由来細胞を用いた遺伝子治療戦略の検証を行うため、ミトコンドリアDNA変異率や詳細なミトコンドリア機能を評価するための実験系の構築を行った。疾患細胞の遺伝子変異に基づき、機能性核酸の設計を進めており、キャリアを用いたミトコンドリア送達による機能発現を検証することを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミトコンドリア内の遺伝子を標的としたアンチセンスRNAの送達、評価には様々な障壁が存在することから、世界でも報告が数例ほどしかない。既存の知見が少ないことからも、今回得られた結果についてさらに詳細な検証が必要であると考え、MITO-Porterを用いたアンチセンスRNAの送達による機能評価を進めた。キャリア構築と評価系の最適化を行ったことにより、標的遺伝子のタンパク質、mRNA発現量抑制、呼吸鎖複合体活性等のミトコンドリア機能抑制を定量的に示すことに成功した。 一方、新規ミトコンドリア標的型キャリアの構築に関しては、ミトコンドリア選択的な輸送タンパク質を利用することを試みたが、調製方法において改良が必要であることが分かった。そのため、現在新たにミトコンドリア移行性素子やポリエチレングリコールを用いてキャリアを最適化するための改善策を検討している。 ミトコンドリア病患者由来細胞を用いて疾患治療の検証を行うことを目指し、変異ミトコンドリアを検証するための評価系の構築を行った。正常ミトコンドリアDNAと変異ミトコンドリアDNAが混在するヘテロプラスミー変異では、変異率が変動することによってミトコンドリア機能障害の程度が変化する。ミトコンドリアDNAの変異率を算出するため、PCR-RFLP法を用いた評価系を構築した。さらに、ミトコンドリア機能を詳細に検証するため、ミトコンドリアタンパク質発現効率や呼吸鎖複合体形成を評価するための実験系を最適化した。現在、疾患細胞の遺伝子変異に基づき、機能性核酸(RNA、DNA)の設計を進めているため、構築した評価系を用いてキャリアを用いたミトコンドリア送達による遺伝子発現、ミトコンドリア機能評価を遂行していく。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はキャリア構築と評価系を最適化し、アンチセンスRNAをミトコンドリアに送達することによって、アンチセンスRNAによる効果を詳細に検証することに成功した。平成28年度は、異なるミトコンドリア呼吸鎖複合体の遺伝子を標的としたアンチセンスRNAを設計し、ヒト由来のミトコンドリア輸送シグナルを組み合わせることによりアンチセンス効果を検証する。キャリア構築において今年度課題となった点を改良し、ミトコンドリア移行性素子やポリエチレングリコール修飾等を最適化したキャリアを用いてアンチセンスRNAを送達した際の効果を検証する。 平成28年度は、さらに変異ミトコンドリアを有する疾患細胞を用いた検証を遂行することにより、ミトコンドリア遺伝子治療の実現を目指す。ミトコンドリア病患者由来の細胞を用いて、疾患治療に向けた治療用遺伝子の設計、変異率やミトコンドリア機能評価の実験系の構築を行ってきた。設計した機能性核酸をキャリアに搭載し、構築した評価系を用いて疾患細胞への送達による機能評価を遂行する。
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