2014 Fiscal Year Annual Research Report
パスタ中での水分の移動機構の解明に基づく高品質な乾燥食品の新規製造指針
Project/Area Number |
14J02443
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小川 剛伸 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | パスタ / 乾燥 / 品質評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
食品加工では,経験的な知見に基づき製造時に食品中の水分を減少させ,保存性や輸送性を向上させることがよく行われる.この際の水の移動挙動により品質は大きく変わる.近年,高品質な食品あるいは新規な機能性を有する食品に対する需要はますます増加しており,体系的な理論に基づく合理的な製造工程の設計が強く望まれている.本研究は,パスタを例に,製造(乾燥)条件と品質の関係を体系化することを目的としている.本年度は,乾燥過程での水の移動挙動を測定する手法の開発を重点的に実施した.研究代表者らは,これまでにパスタの含水率が増加すると色が薄くなることに着目し,パスタの断面画像(反射光画像)の濃淡より,吸水過程におけるパスタ中の含水率分布を測定する手法を開発している.本方法は反射光画像の取得時に試料を切断する必要があり,吸水過程と比べ低い含水率領域内で進行する乾燥過程については,パスタ内の含水率分布を高精度に測定することが困難となる.そこで,平板状のモデルパスタの透過光画像を用いることで非破壊的に含水率分布を測定することを試みた.しかし,高温・低湿度条件では乾燥面以外からの水分蒸発が多く,乾燥の後期過程において含水率分布の測定精度が低下した.一方,乾燥の後期過程では,切断法を工夫することで,切断しても含水率分布を高精度に測定できた.そこで,乾燥の初期過程は透過光画像を用い,後期過程は反射光画像を用いるハイブリッド法を用いることで,乾燥過程におけるパスタ中の含水率分布を高精度に測定する糸口を見出した. また,パスタ中のデンプンやタンパク質の状態分布は,パスタの品質を決定する重要な要因の一つである.従来の蛍光イメージング法では,水の移動に伴うデンプンとタンパク質の状態分布のリアルタイム測定が困難であったが,ラマンイメージング法を用いることで状態分布をリアルタイムに把握できる可能性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記したように,水分蒸発に起因する問題が発生したため,乾燥時の水の移動機構の解明には至らなかった.しかし,新たにハイブリッド法を用いることで,乾燥過程におけるパスタ中の含水率分布を高精度に測定する糸口を見出した.また,当初の計画にはなかったが,ラマンイメージング法を用いることで,パスタ中のデンプンやタンパク質の状態分布が測定できる可能性を示した.蛍光イメージング法のような前処理を必要としないラマンイメージング法は,水の移動に伴うデンプンとタンパク質の状態分布のリアルタイムな測定に有用である.以上のように,研究は順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続き,パスタ乾燥時の水の移動挙動を検討する.さらに,パスタ試料の適切な品質評価法を確立するとともに,種々の温度・湿度条件で乾燥したパスタを用いて,乾燥条件と各種品質の関係を明らかにする.
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