2014 Fiscal Year Annual Research Report
環状π共役系ホウ素化合物の合成とその芳香族性の実証
Project/Area Number |
14J02455
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
荒巻 吉孝 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ホウ素 / 芳香族性 / 含窒素複素環カルベン / 環状不飽和化合物 / ロジウム錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では有機化合物の中で基本的な分子であるベンゼンのホウ素版に相当する「ヘキサボラベンゼン」の初の合成・単離を行い、その構造および物性を明らかにし芳香族性の概念が典型元素のみからなる環状不飽和化合物にも拡張可能であるか実験的に明らかにすることを目的としている。本年度はその前駆体として二座含窒素複素環カルベン(NHC)が配位したホウ素錯体の合成に取り組んだ。 二座NHC錯体の前駆体であるビスイミダゾリウム塩の合成を行い、それを脱プロトン化することでカルベンが二量化した形であるオレフィンを合成した。このオレフィンは反応性が高過ぎたためかハロゲン化ホウ素化合物との反応では複雑な混合物を与えた。しかし、ロジウムクロロシクロオクタジエン二量体との反応では、このオレフィンは二座カルベン等価体として反応し、二座NHCが配位したカチオン性ロジウム錯体を高収率で得ることに成功した。構造の同定は単結晶X線構造解析により行い、一つの金属中心に対して2つのカルベンが二座で配位することが明らかになった。 このロジウム錯体に各種ジボラン化合物を作用させ、カルベン移動反応により二座カルベンホウ素錯体の合成を試みたが全く反応が進行しなかった。これはカルベン-ロジウム結合が目的としたカルベン-ホウ素結合より強いためにカルベン移動反応が起こらなかったと考えられる。そのためよりカルベン-金属結合が弱い錯体の合成にも取り組んだが現在のところ同定・単離には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘキサボラベンゼンを合成するための鍵中間体である、二座のシクロファン型の含窒素複素環カルベン(NHC)配位子が配位したホウ素錯体の合成に取り組んだ。本ホウ錯体の合成法を探索する過程において、カルベンの二量化体であるオレフィンを前駆体とした二座NHCロジウム錯体の合成に成功した。今後、ロジウムの他一連の金属錯体の合成にも取り組み、これらを合成中間体として用いた反応を検討することにより、本研究で提案している標的化合物である「ヘキサボラベンゼン」の初めての合成に向けて取り組む。本年度見出した合成法を用いることで、二座NHCを配位子に用いた一連の新規遷移金属錯体および典型元素錯体の合成へと展開することも可能であり、これらの新奇錯体を用いた触媒反応開発へ展開するなど、当初の提案内容に加えて、本研究が大きく進展する可能性を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は得られたロジウム錯体錯体を含め、同様の手法を用いて二座NHC配位子をもつ遷移金属の合成に取り組み、これら金属錯体を鍵中間体として用いて目的物であるヘキサボラベンゼンの合成を目指す。合成後は各種NMR測定、光物性、電気化学特性を明らかにすることでその芳香族性について評価する。また二座NHC配位子をもつ新規錯体の触媒としての応用も検討し、反応開発への展開も行う。
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Research Products
(2 results)