2015 Fiscal Year Annual Research Report
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14J02485
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
竹川 俊也 早稲田大学, 法学学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 責任能力 / 弁識・制御能力 / 精神の障害 / 触法精神障害者 / 刑事責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、刑事責任能力の実体論的な側面を中心として研究を進めた。具体的には、責任能力要件の第二段階要素(弁識・制御能力)および第一段階要素(精神の障害)の内実と実体要件上の地位を明らかとするため、アメリカ法に示唆を得つつ、法哲学・精神医学における知見を参照しながら分析した。 その結果、①弁識能力要件において問題とされるべきは行為者の認識内容ではなく、認識プロセスの異常性であり、従来的な意味における弁識・制御能力要件は「実質的弁識能力」へと解消されること、②「精神の障害」は実質的弁識能力に並ぶ実体要件としてではなく、実質的弁識能力の認定上の資料に位置づけられ、こうした理解は昨年度の手続論的分析で示した精神鑑定人の役割論とも整合的であることを明らかにした。 本年度は、ペンシルヴェニア大学ロースクール(アメリカ)での1年間の在外研究の機会を得て、アメリカ法(判例・学説)に関する研究を集中的に遂行することができた。これらの成果は、①「刑事責任能力論における弁識・制御能力要件の再構成(1)(2・完)」早稲田法学会誌66巻2号・67巻1号、および②「『精神の障害』と刑事責任能力(1)~(4・完)」早稲田法研論集158号~161号において結実した。 次年度は、これまでの手続論的・実体論的な分析を総合して、博士論文の完成に多くの時間を費やす予定である。具体的には、これまでの分析結果が刑事実務における責任能力の判断プロセスと整合することを明らかにするために、責任能力が争われた過去の裁判例を検討することが課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度はアメリカでの在外研究の機会を得て、自分の研究に集中することができた。紀要論文を2本公開できたことは、当初の計画以上の収穫であった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記で示したように、今後は、これまでに明らかにした手続論的・実体論的な分析結果と裁判例の整合性を提示することが課題となる。そのために来年度は、責任能力が争われた国内の裁判例を網羅的に収集・分析する予定である。
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Research Products
(3 results)