2014 Fiscal Year Annual Research Report
複素環補酵素プテリンを用いた生体内酸化活性種の模倣と酸化触媒への展開
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14J02583
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
見留 広海 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | ルテニウム / ロジウム / ピリジル配位子 / 酸化還元反応 / プテリン |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、中心金属にRu(II)あるいはRh(III)を用い、補助配位子にトリス(2-ピリジル)メトキシメタン(TPMOM)、あるいはビス(2-ピリジルメチル)メチルアミン(MeBPA)を用いて、四種類のN,N-ジメチル-6,7-ジメチルプテリン(Hdmdmp)錯体を合成し、詳細なキャラクタリゼーションを行った。いずれの錯体も、残りの一座にはクロリド配位子を有している。本研究では、目的のパーオキソ架橋錯体を得るために、まず錯体上のプテリンを還元し、その後超酸化物塩を反応させることを計画している。そのために、まず本年度は、各錯体の一電子還元挙動の可逆性を調べた。その結果、[RuII(dmdmp)Cl(TPMOM)]のジプロトン化体、[RuIICl(H2dmdmp)(TPMOM)]2+においてのみ、第一還元過程の可逆性が見出された。 一方、[RuIII(dmdmp)Cl(MeBPA)]+ (1)や、先行研究で用いられた[RuIII(dmdmp)(TPA)]2+ (2)を酸化剤として、炭化水素のC-H結合の酸化反応が可能であることを見出した。これらの錯体は、塩基性(pKa)や酸化還元電位(E1/2)は異なったが、それらの値から計算される結合解離エネルギー(BDE)はほぼ等しい値を示した。そこで、これらの錯体間で反応性を比較することで、従来BDEの値に支配されると言われているC-H酸化反応において、実際にはどのようなパラメータが反応性に影響してくるのかを調べた。その結果、反応速度は基質のC-H結合のBDEに依存して変化し、錯体1よりも塩基性の高い錯体2による酸化反応において、C-H結合がより分極した遷移状態を経由することがわかった。さらに、E1/2が高い錯体1では、基質の酸化電位によって、反応機構が水素移動律速から電子移動律速へと切り替わることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ルテニウム(II)もしくはロジウム(III)を中心金属とした各種プテリン錯体を合成し、その性質を詳細に調べることで、目的に対して有望な錯体を用意することができた。また、ルテニウム(III)-プテリン錯体によるC-H酸化が可能であることを見出し、錯体の性質によってC-H酸化反応の遷移状態が変化すること、基質の酸化電位によって反応機構が変化することを見いだした。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、前年度に見出した、可逆な1電子還元挙動を見せる錯体、[RuIICl(H2dmdmp)(TPMOM)]2+を用いて、目的のパーオキソ架橋構造の形成を目指す。これを用いても目的を達成できなかった場合、金属中心をルテニウムから変更するなどの方法で、新しいプテリン錯体を合成し、それを用いて目的のパーオキソ錯体の合成を行う計画である。 また、C-H酸化における研究においては、アミンに対するN-H酸化を試み、さらに多くの情報を両錯体間の酸化反応性の比較から汲み出すことを計画している。
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Research Products
(2 results)