2014 Fiscal Year Annual Research Report
特異最高ウェイト加群に対するHowe双対性の一般化
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14J02586
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北川 宜稔 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 表現論 / リー群 / 正則離散系列表現 / 分岐則 / Howe双対性 / 特異最高ウェイト加群 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究において、正則離散系列表現の分岐則に関する二つの結果を得た。 一つ目の結果は、複素化が内部自己同型で移りあうような二つの部分群に対する分岐則の間の関係式を求めたことである。Gを連結エルミート型半単純リー群とし、H, H'をGの部分群とする。HとH'の複素化はGの複素化の内部自己同型で移りあうとする。(たとえば、G=Sp(n, R), H=U(n), H'=U(p, q)などがこの条件を満たしている。)さらに、HとH'のリー環はGの極大コンパクト部分群Kのリー環の中心を含んでいるとする。このような場合に、Gの正則離散系列表現をHとH'に制限したときの分岐則の間の関係式を得ることができた。特に、二つの分岐則に現れる重複度の最大値が一致することを示した。 「研究の目的」において、コンパクトdual pairのHowe双対性と非コンパクトdual pairのHowe双対性は複素化を通じて結びついているという事実を述べたが、上記の結果は、この事実の類似とみなすことができる。 二つ目の結果は、普遍包絡環のH-不変元全体のなす代数U(g)^Hのある加群が既約であることを示したことである。GとHは上記の場合と同じ条件を満たすとする。このとき、GとHの正則離散系列表現V, Wに対して、Hom_H(W, V)は自然なU(g)^H-加群の構造を持つ。このU(g)^H-加群が既約であることを示した。この設定において、U(g)^Hはある旗多様体上のH-不変微分作用素環を考えているとみることもできる。 Hがコンパクト部分群の場合には、この定理は(より一般の設定で)古くからよく知られていた結果であり、コンパクトdual pairのHowe双対性の証明にも使われている事実である。また、非コンパクトdualpairに対するHowe双対性自体が、U(g)^H-加群の構造に関する定理だとみなすこともできる。したがって、このようにU(g)^H-加群の既約性を理解することは、Howe双対性の一般化という目的に対して、重要だと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
複素化が等しいような異なる二つの群作用の関係に関して、「研究実績の概要」で述べたように、特別な場合ではあるがよい結果を得ることができた。また、普遍微分作用素環の作用の既約性に関しても、順調に進展している。 一方で、「研究の目的」で述べた代数多様体Xの構成に関しては、具体的な群に関して計算を行い、多様体の候補求めたが、不変微分作用素環の計算が困難で、Howe双対性の一般化と呼べるものの構成には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の二つの結果では、Hのリー環がKのリー環の中心を含むという仮定を置いていた。この仮定は、得られる定理に対して、本質的ではないと思われるので、今後はこの仮定なしに同様の主張が成り立つことを示す。そのために、U(g)^H-加群そのものを考えるのではなく、Hom_c(W, V)_<Δ(h)>という(g+h, Δ(h))-加群の構造を調べる。 Howe双対性の一般化を実現するような代数多様体Xを構成するため、今年度行った計算を精査し、不変微分作用素環の構造を決定する。求めたい代数多様体は極小表現のFockモデルと呼ばれる実現の類似とみなせるので、極小表現の構成を理解することが必要だと考えられる。
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