2014 Fiscal Year Annual Research Report
脂質膜搭載素子の機能発動・解離を時空間的に制御する多重膜遺伝子ナノキャリアの創製
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14J02588
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 浩揮 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリーシステム / リポソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
薬物を作用部位へ送達するためには多くの生体障壁を突破する必要あり、その目的にナノ粒子を利用したDDS研究が広く進められている。従来から生体障壁を突破するための機能性素子が探索されており、複数の素子を同時に利用した多機能性キャリアによる「異なる生体障壁の同時突破」により薬物送達効率の相加相乗的な向上が期待される。しかし、従来型DDSキャリア機能性素子の発動タイミングについて考慮されていなかった。さらに、意図しない機能発動が動態に悪影響を与えることが報告されており、機能発動・解離の時空間的な制御が到達可能なDDSキャリアの開発が必要とされていた。 平成26年度では、二つの異なる粒子を別々に作成し、後から複合体形成を行うことでサテライト型ナノ粒子複合体の形成を行った。ナノ粒子構成材料として当研究室で開発された脂質用物質Palmを用い、粒子リンカーとして相補的PEG脂質化オリゴDNAを用いた。まず電気泳動にてサテライト型ナノ粒子複合体の形成を確認した。内外粒子はアニーリングによりバンドシフトし、一本のバンドとなったことから形成した複合体は均質な集団であることが示唆された。さらに、粒子サイズの温度依存性から、二つの粒子はDNAの二重らせん形成により結合していることを確認した。また、ストレプトアビジン修飾磁気ビーズを用いたアッセイにより、内外粒子の物理的結合が確認されたため、サテライト型ナノ粒子複合体の形成に成功したと判断した。本サテライト型ナノ粒子複合体を細胞へ取り込ませたところ、同じ細胞集団に取り込まれやすくなる傾向が認められ、顕微鏡観察の結果、細胞内においても同じコンパートメントに存在することが明らかとなった。 以上から、階層性を持つキャリアの開発に成功したと判断した。また作成した粒子は複合体として細胞と相互作用することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一年度の到達目標は「機能発動・解離の時空間的な制御が到達可能なDDSキャリアの開発」であった。本年度に開発した階層性キャリアである「サテライト型ナノ粒子複合体」は本要件を満たすものと考えており、従っておおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度はサテライト型ナノ粒子複合体の作成に専念し、複合体形成を確認した。次年度以降では、複数の機能性素子の修飾と、機能発動・解離の時空間的制御を実現することを目標とする。細胞系では、Ex vivo応用を見据え間葉系幹細胞に対する遺伝子導入を行っていく予定である。間葉系幹細胞の単離・培養については、ラットおよびマウスで実験手法を習得済みである。また細胞系に加え、サテライト型ナノ粒子複合体の体内動態制御を行っていく予定である。この目的に担がんマウスを利用し「血中での動態」と「腫瘍内・細胞内の動態」を同時に制御することを目的とする。
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